妻が図書館で借りてきたこちらの本を読んでみたらなかなか興味深かったのでこちらに書き留めておきたいと思います。

「平均」値がひとり歩きして問題となった例として記憶に新しいのが金融庁のWGからの報告書。総務省の2017年の家計調査から取り出されたひと月あたりの「赤字額」から単純計算した「30年間で約2,000万円の取り崩しが必要」という文言がひとり歩きし、年金制度への批判や老後不安に結び付けられてしまいました。

平均値というのは非常に便利な反面、現役世代にとっての老後のように、具体的にイメージすることが難しいときにはそれがすべてだと捉えられかねません。実際のところ、老後にいくら用意しておけばよいかは人それぞれで正解はないのですが…。

ちなみに、平均値として使用された家計調査の「高齢夫婦無職世帯」の収支も年によって結構違いがあります。2017年の結果から単純計算された必要額は2,000万円でしたが、2018年の結果からだと1,500万円、2019年の結果だと1,200万円、そして2020年の結果ではなんと55万円にまで縮小してしまいました。

2020年については定額給付金など新型コロナによる特殊要因もあるようですが、いずれにしても平均値ばかりにとらわれてしまうと判断を誤ってしまうことになります。

これは何もお金に関することだけではなく、学校の成績や人事評価など、あやゆるところに潜んでいることが本書では指摘されています。そして、平均に基づく評価に頼ることで見逃されてしまう重要な「個性の原理」を3つあげています。

1.バラツキの原理
体のサイズやIQテストといった計測値(評価値)について、各要素を平均(総合化)した一次元的な評価をもとにしてものごとを設計したり判断したりすると、見当違いな結果を招く。体の各部位のサイズや評価の各構成要素の相関は弱く、最終的な評価は同じでも構成要素ごとに見ると全く異なる傾向を示す。

2.コンテクストの原理
その人が持っている普遍的な特性(例えば正直さ)と思われているものは、実は置かれている状況(コンテクスト)によって大きく変化する。企業において採用選考時に最も重視されるコミュニケーション能力も、仕事や場面によって一様ではなく、すべてに優れた人材は存在しない。

3.迂回路の原理
赤ちゃんが立って歩くようになるまでの「標準的な」プロセスは存在せず、それぞれ違う経路をたどって最終的には二足歩行を始めるようになる。教育やキャリアについても同様であり、あるポジションやゴールにたどり着くための経路は人によって異なる。


単一の評価やそれによって導かれる「標準モデル」を手放すことは、1人1人と向き合うこと、自分自身で道を見つけることを意味します。「普通」という存在が幻想であることを認める、と言い換えてもよいかもしれません。

それは、今まで「普通」以上を求めていた人々にとって困難を伴うのかもしれませんが、個性を重視するとはそういうことなのだろうと思います。