人事制度や退職金制度を考える際によく言われるのが、「社員が長く安心して働ける会社にしたい」という言葉。でも「長く」ってどれくらい「長く」なんだろうか。

「社員」が主語である以上、会社が一律にそれを決めることはできないから、究極的には本人が働きたいと思う間はいつまでもっていうことになるけれど、そこまで考えて言ってるケースは少ない。

多くは「一人前に仕事ができるようになるまで」「出産や育児、介護をしながらでも仕事を続けられる」といった意味合いであり、「定年までいてもらいたい」という声はあまり聞かない。

ただ定年制や退職金制度などを見ると、「60歳」という年齢で線引きされていることがまだほとんどである。60歳で正規社員としての身分を失い、一旦退職金が支給される。この60歳という年齢に意味はあるのか。

高齢期を迎え、いつまでどのように働くのか、マネープランの観点から考えたときに大きなポイントとなるのが「住宅ローンをいつ返済し終わるか」「子どもがいつ独立するか」の2点である。この2つのめどがつくまでは、安定した収入があったほうが安心なのは間違いない。

住宅金融支援機構の調査によると、2018年度中の完済債権の経過期間は15年以下が6割超、20年以下で8割近くを占める。また、国土交通省の調査では、初めて住宅を取得したときの世帯主の平均年齢は30代後半から40代前半となっている。60歳定年時にローンが残っていても退職金で一括返済するケースが多いのかもしれない。

一方、子どもの独立については、厚生労働省の調査によると出生順位別にみた年次別父・母の平均年齢は次のようになっている。

【父】
第1子:28.3歳(1975年)→32.8歳(2018年)
第3子:33.4歳(1975年)→35.6歳(2018年)

【母】
第1子:25.7歳(1975年)→30.7歳(2018年)
第3子:30.3歳(1975年)→33.7歳(2018年)

特に父についてはばらつきが大きいことが予想されるが、40歳までには末子が生まれているという人が多くを占めていると考えてよいだろう。20代前半には子どもが独立するとすれば、65歳には概ね「肩の荷が下りている」ということになる。60歳だとまだという人もそれなりにいると思われる。

結婚や出産の年齢は徐々に後ろ倒しになり、厚生年金の支給開始年齢も2025年度(女性は2030年度)には65歳への引き上げが完了する。そこまで「社員が長く安心して働ける」ようにするには、事業と雇用の長期継続を前提として、65歳くらいまでは一定の賃金水準を確保できるような制度を構築し、運用していかなくてはならない。