最近は月に1回~数回程度しか更新していないこのブログ、今月はこれが初めての更新ですが、このところアクセスが大きく増えています。こちらの記事がよく見られているためです。



国家公務員の定年を延長する法案が国会で審議入りし、検察官の定年延長が大きく取りざたされている影響でしょう。ただこれは昨年の1月に投稿したものであり、当時の日経の記事をもとに書いたものです。実際の法案の中身がどうなっているのか、改めて確かめてみることにしました。なお法律案の概要、要綱、新旧対照表などはこちらに掲載されています。



60歳前後の賃金はどうなるか?

法案では、定年年齢を段階的に65歳に引き上げることに伴い、60歳以降の俸給月額(賃金)は俸給表(賃金表)に定められた金額の7割にするとしています。また60歳での役職定年制を導入し、降任、降給となる場合の俸給月額は60歳前の7割にすることとしています。この点についてはほぼ昨年1月の記事に書いたとおりです。

ただ、60歳までの賃金カーブの見直しについては今回の法案に具体的な内容は盛り込まれていません。65歳までの定年引上げが完了する2030年3月までに、60歳前後での給与水準が連続的になるよう、昇任・昇格の基準や給与制度の見直しを順次実施することとされており、これから数年かけて65歳までの賃金カーブをなだらかにする検討が進められるものと思われます。

大雑把なイメージはこんな感じでしょうかね。
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なお、人事評価制度については今回の改正法の施行日(2022年4月1日)までに見直しを実施することが盛り込まれており、その点に関しては影響があるかもしれませんが、しばらくは60歳までの給与体系は基本的に維持されることになりそうです。

退職金はどうなるか?

昨年1月の記事にも書いたとおり、公務員の退職金(退職手当)は「基本額」と「調整額」で構成されており、基本額は「退職時の俸給月額×勤続年数・退職事由別支給率」で計算されます。詳細は内閣人事局のページに掲載されています。



定年年齢の引上げに伴って60歳以降は俸給月額が7割となるため、これをそのまま当てはめると退職金の基本額も7割になってしまいます。しかし上記のページにあるとおり、現行制度においても俸給月額が減額されたときには減額前の俸給月額に基づいて計算する特例が設けられており、60歳超で退職した場合はこの特例が適用されることになりそうです。

計算式の上では俸給月額の減額があった後の期間(すなわち60歳以降の期間)も退職金の額に反映されることとなっていますが、定年退職の場合の支給率は勤続35年で頭打ちとなっているため、25歳以降に入職した人を除いて退職金の額はこれまでの60歳定年退職の場合と変わらないことになります。

(注:今回の法案では、60歳以降に退職した場合は定年到達前であっても定年退職の支給率を用いて退職金を計算することとされています。)

なお、今後予定されている賃金カーブの見直しにより60歳までの給与の上がり方が鈍くなると退職金は下がることになるため、その際に支給率(調整率)の見直しを併せて行うのかどうかがポイントになりそうです。

退職年金はどうなるか?

公務員の退職給付には、退職手当のほかに民間の企業年金にあたる年金払い退職給付(退職年金)があります。年金払い退職給付は共済組合の組合員であれば加入対象となり、これまでもフルタイム勤務で再任用された場合は60歳以降も積み立てを継続することとなっているようです(退職年金の支給開始は原則65歳から)。

積立額は標準報酬の一定率(1.5%)とされていることから、60歳以降の賃金が増えればその分退職年金の積立も多少増えることになります。ただこちらも将来的に賃金カーブが見直され、65歳までの総報酬が大きく変わらないように設計されると、65歳まで勤務した場合の給付水準は今とあまり変わらないことになります。


…というわけで、とりあえず定年は徐々に引き上げていって60歳以降の処遇も少しは改善することにしたけれど、ほかの部分には手を付けずに(影響が出ないようにして)、引き上げが完了するまでの間に色々検討を進めていこう、というのがざっと見たところの印象です。本来であればこれらはセットで進めるべき事項であり、民間企業にとってあまり参考にできる内容ではないですね。