先日のクミタテルのコラムにも書いたとおり、来年度以降の企業年金・iDeCoの制度改正については方向性がだいぶ見えてきました。
B191109001
企業年金・iDeCoはこう変わる~企業年金・個人年金部会で示された改正案

詳細については上記リンク先を読んでいただければと思いますが、個人の立場からすると「企業型DC加入者のiDeCo加入要件緩和」が大きなトピックになるでしょう。

ところで、コラムでは「改めて議論するとされた事項」の中の1つとしてさらっと書いただけですが、もう少し長い目で見たときに大きな議論を呼ぶことになりそうなのが「DBの中途引き出しのあり方」です。

税制優遇には根拠が求められる

DB(確定給付企業年金)は法律上は「高齢期において従業員が給付を受ける」ことを直接の目的とした制度です。
確定給付企業年金法第1条(目的)
この法律は、少子高齢化の進展、産業構造の変化等の社会経済情勢の変化にかんがみ、事業主が従業員と給付の内容を約し、高齢期において従業員がその内容に基づいた給付を受けることができるようにするため、確定給付企業年金について必要な事項を定め、国民の高齢期における所得の確保に係る自主的な努力を支援し、もって公的年金の給付と相まって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。

しかし実態としては年金制度というよりも退職金の積立制度として活用されており、DC(確定拠出年金)とは違って60歳以前でも退職したときには給付を受け取れる仕組みになっています。

それでも、DB制度においては、事業主掛金の全額損金算入(従業員の所得にもならない)、運用益は非課税(資産残高に対する特別法人税は凍結)、受取時には退職所得控除または公的年金等控除が適用されるといった税制優遇が設けられています。

ところが、昨今の税制全般にかかわる議論の中では退職所得税制などのあり方も検討項目にあがっており、DBの税制優遇措置を続けるためにはその根拠、すなわち元来の目的である「高齢期における所得の確保」のための制度であることを明確にしていくことが求められる可能性があります。そうなれば、自ずとDC同様に「高齢期」より前の時点での引き出しを制限する方向になっていきます。

年金給付が必要な時期=高齢期か?

しかし、そもそも年金給付の最終目的は「高齢期における所得の確保」の先にある「国民の生活の安定と福祉の向上」です。確かに、引退までの終身雇用が確保されていた時代は「仕事による収入が得られない時期=高齢期」であったかもしれませんが、「人生100年」のマルチステージの時代にはこれは必ずしも当てはまりません。

引退するまでに迎えるいくつかの転機、例えば本格的な学び直しや独立前後の期間においては十分な収入を得られないこともあるでしょう。一方で、高齢であっても元気に働き続ける人も増えており、年金給付の必要性を年齢だけで判断するのは時代にそぐわなくなりつつあります。

生涯にわたる生活の安定と福祉の向上という最終目的のためには、長くなる高齢期に備えると同時に、人生のマルチステージ化への対応資金を確保しておくことも大事です。それによって、結果的に「仕事による収入が得られる時期」を長く、太くすることができるからです。

したがって、高齢期における所得の確保に重点をおいたDCと、会社を離れたタイミングで給付を受け取れるDBは、その性質の違いから役割を分けて考えるのが妥当であり(下記記事も参照)、DBの受取時期に年齢の制約を設ける必要はないと考えます。



ただ、DBにしろDCにしろ退職一時金にしろ、多額の一括受け取りに税制優遇を設ける根拠は薄いと言わざるを得ません。税制上の控除額は「生活の安定と福祉の向上」に必要な範囲内にとどめ、その代わりに退職直後からの分割受け取りも含め、受取方法については柔軟に選択できるようにしていくことが考えられます。

べスティングの条件はDCに揃えていくべき

上記のように、給付の受取時期についてはDBとDCで分けて考えるのが妥当ですが、べスティング、すなわち受給権の付与という観点ではDCに揃えていくべきであると考えます。

現行のDBは少なくとも加入3年以上で一時金の受給資格が得られるようにしなければなりませんが、勤続年数や退職事由によって給付に大きな格差を設けることについては特段の制約はありません。これについては、従来退職金が功労報償的な意味合いを持っており、その設計思想がDBにも反映されていると考えることができます。

しかし、マルチステージ化への対応資金を確保するという観点で考えると、勤続年数や退職事由によって給付額が抑えられてしまうのは不合理だといえます。マルチステージの時代には1人1人のキャリア自律が求められますから、それを阻害するような給付設計(例えば定年まで勤務しないと満額支給されないような設計)には制限を加えるべきでしょう。

したがって、方向性としてはDBにおいても各期に積上げられる金額が明確になるような給付設計とし、一定の加入期間(例えば3年)を満たせば退職事由にかかわらず積み上げられた金額をすべて支給するようにしていくことが考えられます。そうすることで、企業年金・個人年金全体での包括的な拠出限度額を定める「穴埋め型」への転換も考えやすくなるでしょう。