先日の日経に企業年金の運用コンサルタントにも行動指針(スチュワードシップ・コード)を求めるという記事がありました。

ソース元は金融庁Webサイトに掲載された意見書で、以下のように記載されています。
全体の約3割の企業年金が、運用コンサルタントとの間に年金資産の運用に関するアドバイザリー契約を有するとのデータもある。運用コンサルタントが、顧客に対するその影響力を背景として、コンサルタント業務と併せて自らの投資商品の購入の勧誘を行う例も見られるとの指摘があるほか、運用コンサルタントが運用機関のスチュワードシップ活動を適切に評価していないのではないかとの懸念も指摘されている。

運用コンサルタントが、自らが企業年金等のスチュワードシップ活動をサポートする重要な主体の一つであることを明確化した上で、自らの利益相反管理体制の整備やその取組状況についての説明等を行い、こうした取組みを通じて、インベストメント・チェーン全体の機能向上を図ることが重要である。

うーん…。まず「全体の約3割の企業年金」の「全体」とは何を指しているのか。確定給付企業年金は日本に1万件以上ありますが、そのうち運用コンサルタントとの契約があるのは3割どころかせいぜい3%程度ではないかというのが実感です。

2015年度の企業年金連合会資産運用実態調査によると運用コンサルティング会社との平均契約率は24.2%となっていますが、そもそも調査対象となっている企業年金(連合会の会員)は全体の1割程度であり、連合会の会員になっていないような企業年金で運用コンサルティング会社と契約しているところはほとんどありません。

また「運用コンサルタントが運用機関のスチュワードシップ活動を適切に評価していないのではないか」とありますが、スチュワードシップ活動を評価対象とするのかや、どのような基準・手法で評価するのかは、運用コンサルタントと企業年金の契約次第です。

さらに言えば、そもそもクライアントである企業年金がスチュワードシップ活動にリソースを割くべきかどうかについて、受託者責任やその企業年金の固有の事情を踏まえて助言するのもコンサルタントの役割だと考えます。

そういうわけで、今回出された意見書に関して、運用コンサルタントにもスチュワードシップ・コードを求めるという点についてはずいぶんと的外れだなという印象です。