定年年齢の引き上げを行うときに考えなければならない事項の1つに退職金の支給時期があります。例えば定年年齢を60歳から65歳に引き上げる場合、従業員にとっては60歳定年で受け取れるはずだった退職金が勤務を継続する限りは65歳まで受け取れないことになります(定年後再雇用の場合は定年時に一旦退職となるためその時点で退職金が支給されるのが一般的)。

そのため、定年を65歳に引き上げて60歳以降も勤務を継続する場合でも、退職金は経過的に60歳時点で支給するようにするということも考えられるわけですが、その場合は税制上「退職所得」として認められなくなる可能性があります。

退職所得として認められるためには退職に基因して支払われるものであることが基本的な要件となるため、在職中であるにもかかわらず「退職金」が支給されてしまうとそれは給与所得となり、退職所得の場合と比べて所得税や住民税、社会保険料の負担が非常に重くなってしまいます。

実際には、定年を65歳に引き上げたとしても、役職定年などで60歳で身分や処遇が明確に変わる場合などは旧定年である60歳で退職金を支給することとしても退職所得として認められるケースもありますが、いずれにしても税務署への確認が必要となります。

しかし、退職給付の種類によっては退職していなくても退職所得として認められるものもあります。以下は国税庁のタックスアンサー「No.2725 退職所得となるもの」からの抜粋です。
確定拠出年金法に規定する企業型年金規約又は個人型年金規約に基づいて老齢給付金として支給される一時金
確定拠出年金の資格喪失年齢は原則として60歳であり、企業型については最長65歳とすることができますが、定年を65歳に引き上げたからといって資格喪失年齢を必ず65歳に引き上げなければならないわけではありません。退職の有無にかかわらず、60歳以上となって老齢給付金の受給要件を満たせば、一時金として受け取った額は無条件に退職所得になるということです。

これは、確定給付企業年金の一時金に関する記載と比較すると違いが明確になります。
確定給付企業年金法の規定に基づいて支給を受ける一時金で加入者の退職により支払われるもの
また、定年延長を行った場合の旧定年での退職金の支払いについては以下のように記載されています。
労働協約等の改正により、いわゆる定年を延長した場合に、旧定年(延長前の定年をいいます。)に達した使用人に対し、旧定年に達する前の勤続期間に係る退職手当等として支払われるもので、その支給をすることにつき相当の理由があると認められるもの
この「相当の理由」というのをもう少し具体的に書いてくれるといいのですが、現状では個別の事例を見つつ最終的には税務署に照会して確認を取る必要があります。

定年年齢を引き上げる際には、こうした制度による退職所得の取り扱いの違いも考慮に入れたうえで、退職金の設計を考えていくことになります。