このところ、労働契約法20条をめぐる訴訟のニュースが目立ちます。先月には東京メトロの駅構内の売店で働いていた契約社員に対して、正社員との不合理な格差を理由に(もともと契約社員は対象外とされていた)退職金の支払いを命じる判決が出され、注目を集めました(その後上告された様子)。また先週にも以下のような報道がありました。

【朝日新聞】パートと正社員の格差訴訟 124万円の支払い命令確定
【産経新聞】「定年再雇用で給料半減は違法」大阪の塗料会社嘱託社員が提訴

2013年4月の法改正により盛り込まれた労働契約法20条の規定は以下のとおりであり、有期契約労働者(非正規社員)と無期契約労働者(正社員)との不合理な労働条件の格差を禁じています。
(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
第20条
 有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

ここでいう有期契約労働者は、「パートや契約社員等で採用された人」と「正社員を定年退職後に嘱託等として再雇用された人」の2つに大きくわけることができます(なお、同じく労働契約法の改正により定められた「無期転換ルール」が2018年4月から実際に適用され始め、「無期契約労働者だけど正社員ではない」という立場の人も出てきている)。裁判で訴えている人も、私の見た限りではどちらかの立場の人です。

そして裁判所の判決内容を色々見ていくと、条文の中にある「その他の事情」をどのように考慮するかが重要なポイントの1つになっていることが分かってきました。その他の事情とは、どうやら「違いを設けることに人事政策上の合理性があるかどうか」ということのようです。

例えば、冒頭の東京メトロ(正確には、訴えられたのは直接の雇用主である子会社のメトロコマース)の事件では、裁判所は「長期雇用を前提とする正社員について有為な人材の確保・定着を図るためにより手厚く処遇することは、企業の人事政策上の判断として一定の合理性がある」ということを認め、これを考慮した判決を下しています。

但しこのとこだけをもって処遇の違いが不合理ではないと判断しているわけではない点には注意する必要があり、また高裁判決ではこの点を考慮しても長期にわたって勤務した事実のある契約社員に対して一切退職金を支給しないのは不合理であるとして、少なくとも正社員の1/4相当の金額を支払うことを命じています。

また、以前のこちらの記事で紹介した最高裁の判決では、定年後再雇用により賃金を引き下げられた社員からの訴えに対し、「事業主は60歳を超えた高年齢者の雇用確保措置を義務付けられており、定年退職後の継続雇用に伴う賃金コストの無制限な増大を回避する必要があること」を考慮して、職務の内容等に変更がなくても2割程度の賃金の引下げは不合理ではないという判断が示されています。

そのほか、非正規社員から正社員への登用の機会が確保されているか、経営側が格差を縮めるための努力を行ったか、労働条件の違いが転籍時の労働条件の維持などやむを得ない事情によるものか、といったところが「その他の事情」として考慮されていることが、こられの判決内容から読みとることができます。

労働契約法20条に関しては今後も様々な裁判例が出てくると思いますが、この「その他の事情」を裁判所がどのようにとらえているのかに注目しながら判決内容を見ていくと、今後の対応を考えるにあたって参考になるのではないかと思います。

ちなみに、契約社員に対して退職金の支払いを命じたメトロコマースの事件に関しては、高裁判決の内容をもとにした解説を近日中にクミタテルのお役立ち情報に掲載する予定です。