2月22日に開催された社会保障審議会企業年金・個人年金部会の議事録がこちらに掲載されました。今回は第1回ということで、私的年金の現状と今後議論すべき課題について事務局より提示があり、それに対して委員が自由に意見を述べていくというような形で進められました。

非常に長い議事録ですが、最後のほうにある森戸部会長代理の発言が今回の議論を総括するような形となっていて、論点が整理されています。その中の1つがこちら。
カバー率を広げていく、フェアな制度にしていく中で無視できないのが、日本の場合は諸外国にない特色として、もともと退職金制度の伝統、歴史があり、今日御紹介がありましたが、それをどうするか。それはこの老後所得の話とは全然別なものとして考えるのか、それとも退職金制度という、今の企業年金もまだ退職金制度を引きずっているわけですけれども、そういう退職金制度を企業年金、老後の所得保障をする制度に移行させていくのか。そういうことを促すのかという選択を政策上、迫られるのかと思います。
確定給付企業年金(DB)、確定拠出年金(DC)とも、制度の目的についてはそれぞれの法律の第1条に規定されており、「高齢期において給付を受けることができるようにするため」という部分は共通しています。

しかし、DCは原則として60歳になるまで給付を受けることができないのに対して、DBは年齢にかかわらず退職時に給付を受けることができます。今の企業年金もまだ退職金制度を引きずっているという発言は、こうしたことを指しています。

ところで、DBとDC、それぞれの法律の第1条(目的)は、ともに「もって公的年金の給付と相まって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。」と締めくくられています。最終的な目的はこれであって、高齢期に給付を受けることができるようにするというのはそのための手段であるとも言えます。

2016年のDC法の改正では、ライフコースの多様化に対応するため、個人型DC(iDeCo)の加入対象を拡大させることで、職業がどのように変わっても60歳まで掛金の積み立てと運用が継続できるようになりました。

一方で、人生100年時代を迎えるにあたっては、ライフコースを自ら切り開くことで年齢に関係なく仕事を続けられるようにすることも重要であり、そのためには引退後の資金を積み立てるだけでなく、現役時代に学び直しや再就職、独立開業のための資金も必要となります。

退職時に給付を受けることができるDBには、実際、そのような機能を持たせることも可能であり、法律上もそのこと明記してDCとの役割分担を明確にすることで、より「国民の生活の安定と福祉の向上に寄与すること」ができるのではないでしょうか。

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