コラム「年金運用で15兆円もの損失を出してもなぜ公的年金は維持可能なのか?」をクミタテルに公開しました。
年金運用で 15 兆円もの損失を出してもなぜ公的年金は維持可能なのか?
同じような趣旨の記事は、例えば「年金運用が赤字でも公的年金が大丈夫なワケ」にも既に書かれていますが、私の専門とする私的年金(企業年金や個人年金)との比較の観点も交えながら書いてみました。公的年金の運用としては問題なくても、年金制度の運営システムである「財政方式」が異なる私的年金で同じような運用をしていると、場合によっては大きな問題になる、ということです。
コラムにも書いたとおり、国民年金基金は国民年金法に基づく「公的な」年金制度ですが、あくまで第1号被保険者を対象とした任意加入の年金制度であり、私的年金に分類されます。給付は各加入員が納付した掛金とその運用益によって賄われ、公的な資金は入っていません。
しかしながら財政状況は芳しくなく、制度の見直しを考えなければならないのではないかと指摘したところですが、この点についてもう少し掘り下げてみます。
国民年金基金の予定利率は現在1.5%であり、積み立てた掛金を1.5%で運用できれば計画通り年金を支給できるように掛金が設定されています。しかし現状はというと、少なくとも5%程度の運用利回りを確保しないと財政状況の改善は見込めません。そのあたりの理由については下記の過去記事をご参照ください。
これを現在の予定利率1.5%で加入している人の立場で見ると、本来であれば1.5%を安定的に確保できるような運用をしてもらえばいいところを、過去の経緯から生じた積立不足の解消のためによりリスクの高い運用に掛金が投じられることになります。
そして、実際に1.5%より高い利回りが得られたときにはその収益は自分の年金給付に反映されるのではなく、過去に加入した人に対する積立不足の解消に充てられることになります。リスクを取っているのにリターンを得られないという状況です。
こうした状況を考えると、今の国民年金基金は新規の掛金を一旦凍結し、現時点における財政の将来見通しを示したうえで積立不足への対応を考えるべきではないかというのが私の考えです。
積立不足の根本的な解消には給付の削減か公的な資金(例えば公的年金の積立金)の投入、もしくはそれらの組み合わせしかなく、簡単に結論を出せる問題ではないと思いますが、少なくともリスクを十分に認識させないまま新規加入を受け付けている現状は早急に改めるべきでしょう。