高年齢雇用継続給付は、60歳以降も継続して働く人に対して、60歳到達前よりも賃金が25%以上減った場合に雇用保険から出る給付です。例の毎月勤労統計の不正調査による追加給付の対象となっているものの1つであり、追加給付のなかで最も件数が多いのがこの高年齢雇用継続給付ではないかと私は想像しています。

高年齢雇用継続給付は平成6年(1994年)の雇用保険法の改正によりできた仕組みです。この年に厚生年金の支給開始年齢を60歳から65歳に引き上げていくことが決まり、60歳で定年退職してから年金の支給が始まるまでの「空白期間」に対応することが目的でした。

高年齢雇用継続給付があることで、企業側は60歳以降の賃金を大幅に引き下げてもその減少分の一部が雇用保険から補填されるため、定年後再雇用による雇用の継続を後押しする効果があったと考えられます。

しかし、今では状況は大きく変わりました。高年齢者雇用安定法により企業には60歳以降も希望者全員の雇用が義務付けられ、「雇用の促進」という意味は薄れています。

一方で、高年齢雇用継続給付があることで、これを前提とした賃金制度の設計が行われており、60歳以降の賃金水準を給付金が最大となる60歳前の6割程度している企業が多く見られます。定年を65歳に延長した企業においても、60歳以降の月例給与は引き続き60歳前の6割程度のままとし、賞与の引き上げによって処遇の改善を図っている例もあります。

つまり、高年齢雇用継続給付の仕組みが、60歳を境に月例給与をダウンさせるような賃金体系を維持させる誘因になっているということです。年齢に関係なく職務や成果に応じて処遇していくという方向性には逆行しているといえるでしょう。

少し調べてみたところ、希望者全員の65歳までの雇用を義務付けた改正高年齢者雇用安定法の施行のタイミング(2013年)で高年齢雇用継続給付も段階的に廃止していく方針が出ていたようですが、結果としてはそのまま残ってしまったようです。

ただ、高年齢者の雇用に関しては継続雇用年齢を70歳まで引き上げる方向性が出ており、その検討過程では高年齢雇用継続給付のあり方についても議論されることになると思います。仮に60歳代前半の高年齢雇用継続給付が廃止されることになれば、多くの企業において、60歳以降だけでなく60歳未満も含めた賃金制度全体の見直しを考えていく必要があるでしょう。