今年は公的年金の財政検証の年にあたることから、その進め方などについて、厚生労働省の社会保障審議会年金部会において昨年4月から議論が行われています。先日、今年最初の年金部会の開催案内が掲載されたのですが(こちら)、その議題の1つに「私的年金に関する検討について(社会保障審議会企業年金・個人年金部会の開催)(報告)」とあったのが目に留まりました。

これまで、確定給付企業年金や確定拠出年金については「企業年金部会」で制度改定などの議論が行われてきましたが、これが「企業年金・個人年金部会」へと改称されるようです。これは何を意味しているのでしょうか。

直接的には、これからiDeCo(個人型確定拠出年金)の加入可能年齢延長に向けた検討に入るのを契機として、私的年金制度としての企業年金と個人年金を一体的に検討していくことを明確にしたということなのでしょう。

従来は、私的年金といっても政策的な議論の対象となってきたのはほぼ企業年金のみでしたが、ターニングポイントとなったのが2016年の確定拠出年金法の改正です。iDeCoの加入対象が拡大され、個人単位での私的年金の充実という方向に大きく舵が切られました。

背景にあったのは企業年金の後退です。経営環境や雇用慣行の変化により、私的年金を企業だけに頼る(企業が従業員の老後まで面倒を見る)仕組みは成り立たなくなり、個人の自助努力によってリタイア後の収入確保を支援する必要性が高まってきたのです。

ちなみに、厚生労働省年金局での私的年金の担当課は、従来は「企業年金国民年金基金課」という名称でしたが、こちらはすでに2017年から「企業年金・個人年金課」に改められています。

ただ、私的年金の担い手の主役が企業から個人に一気に代わるわけではありません。今の経営環境や雇用慣行にあった形で企業年金制度を活用しつつ、それだけでは不十分な部分を個人年金で補っていくというのが基本的な考え方になるでしょう。企業の役割としては、個人の自律や自助努力を支援することがより重視されるようになります。

そうした中で、私的年金制度としての企業年金と個人年金を一体的に検討していくことは、必然的な流れであると考えます。