先週、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が主催するこちらのシンポジウムに参加してきました。

生涯現役社会の実現に向けたシンポジウムのご案内|独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構
事例発表として、サントリーホールディングスと大和ハウス工業の2社から65歳への定年延長の実施内容について紹介があり、そのあとのパネルディスカッションでは2社に対する突っ込んだ質問もあって、定年延長に踏み切った経緯やその後の運用状況についても聞くことができました。
両社の定年延長は多くの点で共通するところがあり、その1つが「1国2制度型」の定年延長であるということです。つまり、定年は65歳まで延びても職務や処遇については従来の定年である60歳時点で切り替わり、年収は基本的に60歳前よりもダウンする設計になっています。
それでも、従前の再雇用制度を適用していたときの年収に比べればアップしており、定年延長時に60歳前の社員の給与水準を引き下げることはしなかったため、定年延長の実施は社員には好意的に受け止められました。
しかし両社とも定年延長の実施から5年が経過し、以前の制度の記憶は薄れ、比較の対象が従前の制度ではなく60歳前の年収水準になっていくことで、社員の受け止めは変わってきているようです(特に不満が出ているというわけではないが)。
両社とも、60歳以降の年収水準をなぜ今のような設定にしたのかという点については、純粋に仕事に対する貢献度で決めているのではなく、企業年金や公的年金の給付水準であったり、総額人件費への影響も決定にあたっての大きな要素となったということでした。したがって「同一(価値)労働同一賃金」の観点からは説明しづらい点もあるというのが実情のようです。
この問題に関して、今回のシンポジウムで基調講演とパネルディスカッションのコーディネーターを務めた今野浩一郎教授は、現役社員に対する「長期決済型」の賃金体系と高齢社員に対する「短期決済型」の賃金体系が異なるのは当然であるとし、働き方や役割が変わることで賃金も変わることを高齢社員に理解してもらい、合理的に説明する必要があるとしています(例えばこちらの記事)。
しかし仮にそうだとしても、「長期決済型」から「短期決済型」への切り替えのタイミングとして60歳というのは遅く感じます。社内でのキャリアのピークを迎えるのは多くの場合50歳代まででしょう。そもそも年齢で一律に区切るのが妥当なのかという疑問も出てきます。
ただ一定以上の人数規模で、新卒採用者が大半を占めるという企業では、一定の年齢を設定したほうが人事管理の面でも社員の生活設計の面でも計画が立てやすいという面はあるでしょう。したがって、50~55歳あたりを一つの区切りとして、役職を降りない一部の社員以外はその時点で「短期決済型」の賃金体系に移り、その後は退職までそれを維持するという設計が考えられます。
社員にとってはより早い段階で賃金がダウンすることになりますが、60歳前の「役職定年」と60歳の「旧定年」の2段階でダウンするということはなくなり、社内での活躍の機会が見出しにくい社員にとっては、社外への転進についてより早い段階で考え、準備することができるようになるのではないでしょうか。
生涯現役社会の実現に向けたシンポジウムのご案内|独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構
事例発表として、サントリーホールディングスと大和ハウス工業の2社から65歳への定年延長の実施内容について紹介があり、そのあとのパネルディスカッションでは2社に対する突っ込んだ質問もあって、定年延長に踏み切った経緯やその後の運用状況についても聞くことができました。
両社の定年延長は多くの点で共通するところがあり、その1つが「1国2制度型」の定年延長であるということです。つまり、定年は65歳まで延びても職務や処遇については従来の定年である60歳時点で切り替わり、年収は基本的に60歳前よりもダウンする設計になっています。
それでも、従前の再雇用制度を適用していたときの年収に比べればアップしており、定年延長時に60歳前の社員の給与水準を引き下げることはしなかったため、定年延長の実施は社員には好意的に受け止められました。
しかし両社とも定年延長の実施から5年が経過し、以前の制度の記憶は薄れ、比較の対象が従前の制度ではなく60歳前の年収水準になっていくことで、社員の受け止めは変わってきているようです(特に不満が出ているというわけではないが)。
両社とも、60歳以降の年収水準をなぜ今のような設定にしたのかという点については、純粋に仕事に対する貢献度で決めているのではなく、企業年金や公的年金の給付水準であったり、総額人件費への影響も決定にあたっての大きな要素となったということでした。したがって「同一(価値)労働同一賃金」の観点からは説明しづらい点もあるというのが実情のようです。
この問題に関して、今回のシンポジウムで基調講演とパネルディスカッションのコーディネーターを務めた今野浩一郎教授は、現役社員に対する「長期決済型」の賃金体系と高齢社員に対する「短期決済型」の賃金体系が異なるのは当然であるとし、働き方や役割が変わることで賃金も変わることを高齢社員に理解してもらい、合理的に説明する必要があるとしています(例えばこちらの記事)。
しかし仮にそうだとしても、「長期決済型」から「短期決済型」への切り替えのタイミングとして60歳というのは遅く感じます。社内でのキャリアのピークを迎えるのは多くの場合50歳代まででしょう。そもそも年齢で一律に区切るのが妥当なのかという疑問も出てきます。
ただ一定以上の人数規模で、新卒採用者が大半を占めるという企業では、一定の年齢を設定したほうが人事管理の面でも社員の生活設計の面でも計画が立てやすいという面はあるでしょう。したがって、50~55歳あたりを一つの区切りとして、役職を降りない一部の社員以外はその時点で「短期決済型」の賃金体系に移り、その後は退職までそれを維持するという設計が考えられます。
社員にとってはより早い段階で賃金がダウンすることになりますが、60歳前の「役職定年」と60歳の「旧定年」の2段階でダウンするということはなくなり、社内での活躍の機会が見出しにくい社員にとっては、社外への転進についてより早い段階で考え、準備することができるようになるのではないでしょうか。