18日、厚生労働省から、2019年度(2019年4月~)の年金額が2018年度から0.1%のプラス改定となることが公表されました。
平成31年度の年金額改定について
公的年金は、老後の生活保障としての位置づけから、物価や賃金の水準が上がったときにはそれに連動して年金額を上げる仕組みになっています。じゃないと生活できなくなりますからね。
ただ、物価や賃金の上昇をそのまま年金額に反映してしまうと、今の現役世代や子ども世代が老後を迎えたときに十分な額の年金を支給することができなくなる可能性があるため、今のうちから少しずつ年金額の水準を抑えていく仕組みになっています。これが「マクロ経済スライド」です。
今回の年金額の改定では、このマクロ経済スライドが4年ぶりに適用されることとなりました。
今回が「4年ぶりの適用」ということで、過去4年はどうだったかというと、
これはどういうことでしょうか?
じつはこの3年については賃金上昇率や物価上昇率がマイナスとなったことから、マクロ経済スライドを適用しなくても年金額は据え置きまたはマイナス改定となり、その場合はマクロ経済スライドの適用によってさらに年金額を引き下げることはしないこととしています。今の老後世代に配慮した仕組みですね。
ただマクロ経済スライドの適用を見送ると、そのしわ寄せは現役世代にいくことになります。実際、マクロ経済スライドは2007年度から適用する計画でしたが、実際に適用されたのは今回を含めてまだ2回しかありません。それだけ賃金や物価(特に賃金)がなかなか上がらなかったということです。
そこで、2018年度以降は、マクロ経済スライドが適用されなかった分の調整率を翌年度以降に繰り越す「キャリーオーバー」が導入されました(本来であればマイナス改定であってもマクロ経済スライドを適用すべきところですが、政治的な問題もありそこまでは至らず)。
2018年度のマクロ経済スライド調整率は▲0.3%でしたが、上記のとおり実際には適用されなかったために繰り越され、今回の2019年度のマクロ経済スライド調整率▲0.2%と合わせて▲0.5%分が年金額の改定に反映される結果となりました。これでキャリーオーバーが解消されたことになります。
当初の予定から10年以上遅れてようやく計画が実現しつつあるわけですが、まだ本来の姿になっているとは言えません。それは、賃金上昇率が物価上昇率を下回る状態(つまり、実質賃金上昇率がマイナスの状態)から脱していないからです。
賃金上昇率が物価上昇率を上回ると、新規裁定者(新たに年金を受給する人)に対しては賃金上昇率を基準に年金額が改定されるのに対して、既裁定者(既に年金を受給している人)に対しては物価上昇率を基準に年金額が改定される仕組みとなっており、現役世代のために今の老後世代の年金額を抑える機能がより働くことになります。
上の図でいくと①の状態ですね。
これが制度設計上、想定されている状態であり、現役世代にとって好ましい状態です。物価が上がってもそれ以上に賃金が上がるというのは、将来だけでなく今の生活にももちろんプラスであり、経済状況全体としても望ましい状態ですから、結局のところこれをどのようにして実現していくかということが本質的な課題になります。
ちなみに、年金額の改定の基準となる賃金上昇率は、厚生年金の保険料や年金額の計算に用いる標準報酬をもとに算定されたものであり、不適切調査が明らかになった毎月勤労統計は使われていません。
平成31年度の年金額改定について
公的年金は、老後の生活保障としての位置づけから、物価や賃金の水準が上がったときにはそれに連動して年金額を上げる仕組みになっています。じゃないと生活できなくなりますからね。
ただ、物価や賃金の上昇をそのまま年金額に反映してしまうと、今の現役世代や子ども世代が老後を迎えたときに十分な額の年金を支給することができなくなる可能性があるため、今のうちから少しずつ年金額の水準を抑えていく仕組みになっています。これが「マクロ経済スライド」です。
今回の年金額の改定では、このマクロ経済スライドが4年ぶりに適用されることとなりました。
日本経済新聞 電子版@nikkei具体的には、賃金上昇率をそのまま年金額に反映すると0.6%のプラス改定となるところを、マクロ経済スライド分の▲0.5%を加味して0.1%のプラス改定に抑えています。2019年度の公的年金の受取額はプラス改定になったものの、年金の伸びを抑える「マクロ経済スライド」を4年ぶりに発動。改定率を賃金や物価の伸びより抑え、将来世代の給付に備えます。
2019/01/18 11:42:53
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今回が「4年ぶりの適用」ということで、過去4年はどうだったかというと、
- 2018年度の改定:据え置き(±0%)…マクロ経済スライド適用なし
- 2017年度の改定:0.1%のマイナス改定…マクロ経済スライド適用なし
- 2016年度の改定:据え置き(±0%)…マクロ経済スライド適用なし
- 2015年度の改定:0.9%のプラス改定…マクロ経済スライド適用あり
これはどういうことでしょうか?
じつはこの3年については賃金上昇率や物価上昇率がマイナスとなったことから、マクロ経済スライドを適用しなくても年金額は据え置きまたはマイナス改定となり、その場合はマクロ経済スライドの適用によってさらに年金額を引き下げることはしないこととしています。今の老後世代に配慮した仕組みですね。
ただマクロ経済スライドの適用を見送ると、そのしわ寄せは現役世代にいくことになります。実際、マクロ経済スライドは2007年度から適用する計画でしたが、実際に適用されたのは今回を含めてまだ2回しかありません。それだけ賃金や物価(特に賃金)がなかなか上がらなかったということです。
そこで、2018年度以降は、マクロ経済スライドが適用されなかった分の調整率を翌年度以降に繰り越す「キャリーオーバー」が導入されました(本来であればマイナス改定であってもマクロ経済スライドを適用すべきところですが、政治的な問題もありそこまでは至らず)。
2018年度のマクロ経済スライド調整率は▲0.3%でしたが、上記のとおり実際には適用されなかったために繰り越され、今回の2019年度のマクロ経済スライド調整率▲0.2%と合わせて▲0.5%分が年金額の改定に反映される結果となりました。これでキャリーオーバーが解消されたことになります。
当初の予定から10年以上遅れてようやく計画が実現しつつあるわけですが、まだ本来の姿になっているとは言えません。それは、賃金上昇率が物価上昇率を下回る状態(つまり、実質賃金上昇率がマイナスの状態)から脱していないからです。
賃金上昇率が物価上昇率を上回ると、新規裁定者(新たに年金を受給する人)に対しては賃金上昇率を基準に年金額が改定されるのに対して、既裁定者(既に年金を受給している人)に対しては物価上昇率を基準に年金額が改定される仕組みとなっており、現役世代のために今の老後世代の年金額を抑える機能がより働くことになります。
上の図でいくと①の状態ですね。
これが制度設計上、想定されている状態であり、現役世代にとって好ましい状態です。物価が上がってもそれ以上に賃金が上がるというのは、将来だけでなく今の生活にももちろんプラスであり、経済状況全体としても望ましい状態ですから、結局のところこれをどのようにして実現していくかということが本質的な課題になります。
ちなみに、年金額の改定の基準となる賃金上昇率は、厚生年金の保険料や年金額の計算に用いる標準報酬をもとに算定されたものであり、不適切調査が明らかになった毎月勤労統計は使われていません。