先日、人事コンサルタントの方との対談の中で、これからの時代、人事には「採用→育成→活躍」にかかる期間を短くしていくことが求められるという話がありました。年齢に関係なく実力のある人材を見出し、登用していかないと、競争に負けてしまうということです(詳しくは後日クミタテルに掲載の予定)。

若手社員のレンタル移籍

それを実現するには、社員に早い時期から責任あるポジションで仕事を任せることで、成長スピードを上げ、活躍してもらうことが重要になるわけですが、特に「育成」の段階ではそういう仕事を社内で用意することは難しいことも多いでしょう。

そうしたときに使えそうなのか「企業間レンタル移籍」という仕組みです。入社10年目くらいの社員を人材育成の目的でベンチャー企業に貸し出し、実戦経験を積ませるというサービスです。

(ちなみに、こちらのサービスは同僚から「こんなのあるよ」と教えてもらったもので、私が何か関与しているということではありません。)

導入企業(貸し出す側の企業)は主に大企業で、離職率が低く、転職や独立を真剣に考えているわけではないが、力を持て余し気味の若手社員がいるという場合にマッチしそうです。ただ、レンタル先でしっかり成果をあげた社員には、それなりのポジションを用意しておかないと、レンタルではなく本当に移籍してしまうかもしれません。

あるいは、新規事業の立ち上げなどに際して、研修の一環としてレンタル移籍を活用することも考えられるでしょう。

シニア社員のトレード移籍

一方で、若手社員の育成と同時に必要となってくるのが雇用の出口戦略、すなわちイグジットマネジメントです。「採用→育成→活躍」の先にある「→自律→退職(卒業)」という一連のサイクルを回せるようにしておかないと、60歳以降の雇用延長が義務付けられたことによって「ぶら下がり人材」が滞留してしまうおそれがあります。

こうした観点からも、若いうちにレンタル移籍によって社外での勤務を経験させるということは有効であると考えます。「→自律→退職」という出口を自分なりにイメージすることがしやすくなるからです。

ただ、企業にとってのより差し迫った課題としては、そうした経験をすることなく今後数年のうちに定年を迎えていく人たちをどう処遇していくかでしょう。報酬面の問題だけではなく、上司部下の関係が逆転することによる心情面への対応をどうするかといったことも課題になります。

そうした問題への対策の1つとして、シニア人材を他社と交換したらどうかという案が出てきている会社もあります。若手社員のレンタル移籍に対して、こちらはシニア社員のトレード移籍ですね(本当に移籍するかどうかは一定期間試してから決めることでもよい)。

どのように人材をマッチングさせていくかという課題をクリアする必要はありますが、そうした仕組みを構築できれば、会社としても従業員としても新たな選択肢ができ、社会全体にとっても価値あるものになると考えています。