先日、「老後の資産形成を目的とした税制優遇付きの「貯蓄枠」~日本版IRAとは?」の記事にも書きましたが、既存の税制の枠組みを統合した国民共通の「非課税貯蓄枠」の創設が政府税調で議論されています。

細分化された今の制度をわかりやすい形に整理していくという方向性は共有されているものの、統合後の具体的な形については色々と議論があるようです。

iDeCoやつみたてNISAなど、個人の資産形成を支援する意味合いで税制優遇措置を設ける場合、以下のどの段階で課税(Taxed)し、どの段階で非課税(Exempted)とするのかによって、大枠が決まります。

・拠出時(積み立てた掛金等に対する取扱い)
・運用時(積み立てた資金の運用益に対する取扱い)
・給付時(受け取った給付に対する取扱い)

例えば、iDeCoの場合だと、掛金は全額所得控除されるので拠出時は非課税(Exempted)、運用益についても非課税(Exempted)、そして受け取り時にには一定の控除枠はありますが課税(Taxed)の扱いとなっています。このようなタイプをそれぞれの頭文字をとって「EET型」と呼びます(本来的には特別法人税があるのでETTだが実質的にはEETとなっている)。

一方、つみたてNISAの場合だと、課税されたあとの所得から資金を積み立てるので拠出は課税(T)、運用益は(今のところ20年限定ですが)非課税(E)、受け取り時も非課税(E)なのでTEE型になります。

所得税は、その年に得られた所得に対する税金ですから、いつの時点の所得とするかで拠出時と給付時のどちらかを「T」とすることになります。iDeCoは掛金を拠出した時点で受け取り時期が原則として60歳以降に固定され(年金)、一方のつみたてNISAはいつでも引き出し可能(貯蓄)ですから、それぞれ給付時、拠出時を「T」としているわけです。

そして運用益についてはどちらも「E」とすることで、税制面から積み立てを支援する形となっています。

こうした考え方をもとに、今ある年金・積立制度を整理すると、以下のようになります。
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それぞれの頭文字をとってPICPモデルといいます(いま私が名付けました)。

個人貯蓄、個人年金、企業年金のそれぞれの枠の中では各制度の税制優遇を受けられる拠出(積立)限度額の枠を共有し、受け取りに関しても分割(年金受取)・一括(一時金受取)にかかわらず控除の仕組みを統一することで、税の仕組みとしてはだいぶスッキリするでしょう。

最終的にはEET型の3つの「年金」の枠を共有することで、職業や制度によらない、共通の控除枠ができることになります。そうすれば、制度間の資金の移動(ポータビリティ)も今より柔軟にできるようになります。

ところで、このPICPという名前、どこかの年金コンサルティング会社の名前に似てますね😉