今年も年末調整の時期がやってきました。税制改正の関係で今まで2枚だった書類が3枚になり、書き方に関する記事も時々見かけるようになりました。

年末調整とは何なのか

この年末調整、そもそも何のためにやっているのかといえば「税金の精算」です。税金は、非常におおざっぱにいえば次の2つのステップで計算されます。
  1. 収入から経費として認められる金額を差し引く(控除)
  2. 1で計算した額(課税所得)に税率を掛ける
したがって、収入が同じであっても、1で「経費として認められる金額」が大きいほど課税所得は小さくなり、納めるべき税金も小さくなる(手取りの収入が増える)ということになります。

年末調整は、「経費として認められる金額」を正しく申告することによって税金を本来納めるべき金額に計算し直し、11月までの給与から天引きされて払い過ぎていた税金を返してもらうための手続きです。

「経費として認められる金額」を、もう少し細かく分解すると、次のようになります(図の大きさと金額の大きさは無関係ですのであしからず)。
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まず、給与所得控除は「みなし経費」として認められている金額であり、給与収入の額から計算式により自動的に計算されます。よって手続きは不要です。

次に、厚生年金保険料や健康保険料など、給与天引きにより支払っている社会保険料も会社が把握していますので、本人の手続きは不要です。給与天引きで支払っているiDeCo(個人型確定拠出年金)やマッチング拠出の掛金などもここに入ります。

その次にあるのが年末調整です。ここでは、家族に関係する控除(例えば、配偶者や16歳以上の子どもを扶養している場合には、経費として認められる額が増える)や、その年に支払った各種保険料等(すでに控除されている社会保険料等を除く)の全部または一部を控除するため、これらに関する事項を書類に記入し、保険料の支払証明書等と一緒に会社に提出します。口座引き落としで支払っているiDeCoの掛金は、その全額がここに入ります。

ちなみに、16歳未満の子どもが控除の対象になっていないのは、16歳未満の子どもに対しては別途児童手当(一時期は子ども手当と呼ばれていた)が支給されるからです。

なお、住宅ローン控除も2年目以降は年末調整で控除できますが、これは課税所得に税率を掛けた後の税金から直接控除できる「税額控除」と呼ばれるものであり、ほかの控除(税額控除に対して所得控除という)とは異なるとても強力な控除です。

そして最後に残ったのが確定申告による控除です。医療費控除や寄附金控除(ふるさと納税など)、1年目の住宅ローン控除や雑損控除がある場合は年末調整では対応できないので、年明けに確定申告(還付申告)を行うことで税金が返ってきます。

年末調整はスマートに

ということでだいぶ前置きが長くなりましたが、年末調整で申告するのは扶養している家族に関する事項と、その年に支払った保険料等に関する事項、そして住宅ローンに関する事項となります。

税の三原則に「公平・中立・簡素」というものがありますが、私に言わせればこれは死語となっており、特に「簡素」に関しては消費税の軽減税率を見ても分かるとおり全く守られていません。年末調整に関しても同じで書類の様式は年々複雑になり、今年は枚数が2枚から3枚に増えました。

しかし当社では年末調整の手間はさほど変わっていません。というか、むしろ減りました。

というのは、以前にもこのブログに書きましたが、SmartHRというシステムを使っており、Web上で画面の指示に従って入力していくと自動的に年末調整書類ができるようになっています。去年までは最後は印刷してハンコを押していましたが、今年はそれも必要なくなりました。

入力が終わったら内容を確認してクリック、あとは保険料等の証明書を提出するだけです。書き間違いを訂正印で訂正したり、ややこしい生命保険料控除の計算を間違えることもありません。一部の項目については前年の内容が引き継がれているので、入力も省略できます。

会社のほうであらかじめ税務署に申請しておくと、電子データで申告できるようになるみたいですね(こちらを参照)。

なお、Webで提出した年末調整書類はPDFファイルで控えを保存しておくことができます(以下は記入前の様式です)。
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あと数年したら「えっ、年末調整って手書きだったんすか?」みたいな発言がどこでも聞かれるようになるんじゃないでしょうか。