先日の記事では企業年金連合会の2017年度決算(財政状況)について見たところですが、国民年金基金連合会のほうでもひっそりと2017年度の財政状況が更新されました。

国民年金基金は、47都道府県に設立された「地域型基金」と25の職種別に設立された「職能型基金」、それに各基金を中途脱退した加入員を引き継いで給付を行っている国民年金基金連合会により構成されています。

財政運営は各基金ごとに行われていますが、加入員の減少に伴い、地域型基金のすべてと職種別基金のうち22基金は2019年4月に合併することとなっています。また、どの基金も給付設計は共通しており、資産運用についてもその効率性の観点から大部分は連合会が共同でまとめておこなっています。

したがって、国民年金基金の年金財政については、連合会を含むすべての基金を合算して見ることで、国民年金基金制度全体としての財政状況を把握できると考えてよいでしょう。実際、連合会では、連合会自身の決算に加えて全基金を合算した年金財政の推移についても公表しています(こちらに掲載)。

で、その中身はというと、運用成績についてはそれほど悪くないにもかかわらず、財政については積立不足が常態化しています。
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積立比率は責任準備金に対する実際の積立金額の比率を表したものであり、本来は100%を確保していないといけないのですが、ずっと100%を下回ったままであり、直近では8割程度にとどまっています。

運用が非常に好調で10%を超えるような収益率をあげている年度は積立比率も改善していますが、5~6%程度の収益率では積立比率を維持するのがやっとの状況であることが見て取れます。

なぜこのような状況になっているかというと、1つは予定利率の高い加入員、受給者が多いということです。国民年金基金の予定利率はこれまで徐々に引き下げられており、2014年4月以降の加入については1.5%となっていますが、1995年3月までは5.5%または6.5%となっていました。

制度の加入対象となる第1号被保険者(自営業者等)が減少していくなかで、国民年金基金への新規加入員も減少傾向にあり、相対的に古い時代に加入した層が多くを占めているため、全体としては予定利率は高止まりしていると考えられます。

また、積立比率が100%未満であるということは、運用収益を稼ぐための元本が不足しているということであり、例え予定利率どおりの収益をあげたとしても、財政運営上必要な収益を確保することはできず、積立不足の額は拡大することになります。

それでも、今後加入員が継続的に増加していくことが見込めるのであれば、資産規模を拡大し、平均的な予定利率を徐々に引き下げていくことで、少しずつ状況を改善していくことができるかもしれません。しかし実際には国民年金基金の加入員は2003年度末の78.9万人をピークに減り続けており、2017年度末には37.5万人とピーク時の半分以下となっています。

公的年金制度において、厚生年金の適用範囲を拡大していく方向にあることも、基金の財政にとってはマイナスだといえます(基金に加入している第1号被保険者が第2号に変わることで加入資格を喪失)。

来年4月に予定されている69基金の合併も、事務コストの削減にはつながるでしょうが、年金財政の抜本的な改善策とはなりません。給付の減額など、痛みを伴う改正を行わない限り、国民年金基金の財政を自力で再建することは非常に困難な状況にあると私は見ています。