国の年金積立金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、26日、2018年度の計画変更を決定しました。

GPIFでは以下のような基本ポートフォリオを定め、これに沿った運用を行っていますが、このうち国内債券の割合については弾力的に適用することとし、短期資産と合算した割合が当初定めた範囲内になるようにするというのが変更の内容です。
  • 国内債券:35±10%
  • 外国債券:15±10%
  • 国内株式:25±10%
  • 外国株式:25±10%
2018年6月時点での国内債券の残高は43.7兆円、積立金全体の27.1%となっており、基本ポートフォリオで定めた範囲の下限である25%に近くなっていました。一方で基本ポートフォリオには組み込んでいない短期資産が10.7兆円(6.6%)に積み上がっています。

GPIFは国内債券の利払いや償還で得られたキャッシュを年金給付に充てる計画でいたところ、国の厚生年金を一部代行していた厚生年金基金が原則廃止となり、その解散によって資金が国に返還されたことで給付への充当が不要となったために短期資産が積み上がってしまったようです。

実際、厚生年金の収支決算を見ると、2016年度は4.4兆円、2017年度は1.6兆円が「解散厚生年金基金等」として計上されています。ただ厚生年金基金の解散はすでにピークを過ぎており、今後さらに追加資金が流入してくることはないと考えられます。

あくまで基本ポートフォリオに忠実に運用するのであれば、余った資金で国内債券を追加購入し、構成割合を維持することになりますが、超低金利により期待できるリターンは短期資産とさほど変わらず、今後の金利上昇による価格下落のリスクもあることから、「近時の市場環境において国内債券への機械的な再投資は必ずしも被保険者の利益にならない可能性があることを踏まえ、当面の対応として」今回の計画変更に至ったということです。

確定給付型の企業年金では、予定利率の確保のために国内債券の投資対象を日本国債以外にも広げる動きもありますが、GPIFは短期的なリターンを求められるわけではなく、今回の計画変更は妥当なものだと考えます。