私もこれまでに何度か寄稿している企業年金連合会の月刊誌、その名も月刊「企業年金」の、今月号の特集テーマは「エイジレス・ライフの実現と企業年金」でした。

厚生労働省の出身で高齢者雇用や年金制度改革に関わった2人の専門家の寄稿に加え、65歳への定年延長を実施した2社の事例が紹介されています。この2社に共通するのは、もともと確定給付企業年金で終身年金を設けており、定年延長に伴って終身年金を廃止または縮小している点です。

終身年金を設けている場合、定年延長にあわせて60歳以降の5年間で年金額を積み増したとしても、支給開始を後ろ倒しにすることで、支給の総額は減少する可能性が高くなります。企業側からすると、年金にかかるコストを削減できることになります。

1
上の図は、加入期間が35年から40年に伸び、それに比例して年金額が14%増加したとしても、支給期間が25年から20年に短縮されることで支給総額は9%近く減少することを示しています。これによって企業は浮いたコストを定年延長後の処遇改善(賃金の引上げ等)の原資に充てることができます。

さらに、終身年金を最長85歳までの有期年金としたり、85歳以降の終身払いの部分を減額することで、より多くの原資を確保することができます。終身年金を有期化したり減額することは「給付減額」にあたるため、相応の理由がないと実施することは困難ですが、定年延長による処遇改善と引き換えに実施することで労使合意は得やすくなるでしょう。

ある意味、定年延長は企業にとってなかなか手をつけられなかった終身年金にメスを入れる好機であるともいえます。

終身年金は加入者にとって見ればもちろん素晴らしい制度ではありますが、人生100年時代に向かっていく中で、一企業が従業員に対して生涯の年金支給に責任を持つことには限界があると言わざるを得ません。定年延長などの高齢者雇用の環境整備が進むにつれて、企業年金における終身年金はますますレアな存在になっていきそうです。