来年の公的年金の財政検証に向けた議論が行われている厚生労働省の年金部会において、先週、第4回の会合が開かれました。テーマは「被用者保険の適用拡大」と「年金財政における経済前提(専門委員会の中間報告)」。このうち、被用者保険(厚生年金)の適用拡大については62ページに及ぶ資料が配布されていますが(こちらに掲載)、その中で目に留まったものをいくつかピックアップしてみました。

第1号被保険者の多くは自営業者ではない

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国民年金の加入者(被保険者)は3つの種別に分かれており、会社員や公務員が「第2号」、第2号の加入者に扶養されている配偶者が「第3号」、そして第2号にも第3号にも該当しないのが「第1号」で、一般的には「自営業者等」と表現されます。

「自営業者じゃない第1号被保険者は多いんじゃないかな」と思いつつも、私もそのように書いていますが、上の図にあるように2014年の調査では家族従業者を含めた自営業者の割合は第1号被保険者の25%にも満たず、最も多くを占めているのはパート・アルバイト等の雇用者(被用者)で40%近くに達しています(次に多いのが学生などの「無職」)。

正直、自営業者の割合がここまで低いとは私も知りませんでした。過去の調査結果からの推移を見ると、1999年の調査ではまだ自営業者の割合が雇用者を上回っていましたが、2002年に逆転し、その後は雇用者の割合のほうが増えていく傾向にあります。

もともと第1号は定年のない自営業者を想定したものであり、厚生年金はありません。そうした中で非正規の雇用者の割合が増えているということは、将来、生活していくうえで十分な所得を確保できないの高齢者が増える可能性があるということであり、こうした人たちを第2号に入れることで基礎年金と厚生年金を確実に受給できるようにすることが「被用者保険の適用拡大」の大きな目的だといえます。

適用拡大の対象となったのは第3号よりも第1号

被用者年金の適用拡大については2016年及び2017年に部分的に実施されていますが(週労働時間や月収基準の引下げ等)、2017年末時点で第2号(厚生年金の対象)となっている短時間労働者に対して、適用拡大前の状況がどうだったのかを表しているのが以下の2枚です。
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1枚目は適用拡大前の被用者区分がどうだったかを示しており、これを見ると第3号よりも第1号のほうが多かったことが分かります。メディアでよく取り上げられるのは「103万円の壁」などと言われるように自分で保険料を負担していない第3号のほうで、第1号についてはあまり注目されていないのが現状ですが、実態はそうではないということですね。

2枚目とあわせて見ると、適用拡大の対象となった元第1号被保険者は40~50代の低収入世帯の人が多く、適用拡大前は約半数が国民年金保険料を(一部)免除または未納となっており、適用拡大が将来の低年金者の問題の改善につながっていることがわかります。

被保険者の割合が低い宿泊業・飲食サービス業

パート労働者は「卸売業・小売業」「宿泊業・飲食サービス業」といった業種に偏在しており、特に宿泊業・飲食サービス業においては従業員の4割以上がパートとなっています。スーパーや外食チェーンで働いているパート・アルバイトが多いことは容易に想像がつきます。
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これに対して、厚生年金の適用を受けている短時間被保険者の数で見ると「卸売・小売業」が突出しており、「宿泊業・飲食サービス業」はそれほどでもありません。
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これは、宿泊業・飲食サービス業で働いているパート・アルバイトの労働時間や月収が短い(低い)ために、2016~2017年の適用拡大後もその対象外となっているためではないかと考えられます。

こうした人たちの中には、複数のアルバイトを掛け持ちでやっている人も多いかもしれませんが、現行制度では、それぞれの事業所において労働時間等の要件を満たすかどうかで適用対象とするかどうかを判断することとなっており、掛け持ちしていても合算されることはありません(詳細は資料の52ページに記載あり)。

これを合算して判断するということは実務上難しいと思いますので(例えば、誰が判断するのか?等)、いずれこうした人たちも適用対象としていくには、労働時間等に関わらず全雇用者を対象とするしかないでしょう。

その場合には、細切れの労働時間や収入をどう年金に反映し、保険料をどう徴収するのか、事業所側の事務負担にも配慮する必要があり、単純に標準報酬月額の下限を引き下げて対象を拡大するやり方では限界があるように思います。