中小企業退職金共済(中退共)は国の機関である勤労者退職金共済機構が運営する退職金共済制度ですが、同機構は建設業退職金共済(建退共)、清酒製造業退職金共済(清退共)、林業退職金共済(林退共)というほかの3つの退職金共済制度の運営も行っています。この3つを合わせて特定業種退職金共済(特退共)といいます。

これとよく似た名前の制度に特定退職金共済があり、こちらも特退共と略される(私の感覚だと特退共といえば通常こちらを指す)ので非常に紛らわしいのですが、「業種」が入らないほうの特退共は、各地の商工会議所やその他の団体により、会員企業や所属法人を主な対象として実施されている共済制度であり、「業種」が入るほうの特退共とは全く別の制度です(内容としては中退共に近い)。

以下、この記事では「特退共」を機構が運営する特定業種退職金共済の意味で使います。

特退共の3共済についてはその存在は認識していたものの、仕事の上ではほぼ関わりはなかったので詳細については把握していませんでした。が、退職金制度全般の概要のまとめを執筆する機会ができたので、少し調べてみました。

<制度の目的>
複数の企業間を移動して雇用されることの多い建設業、清酒製造業、林業に従事する期間従業員に対して退職金を積み立てるのため制度。

<加入企業>
建設業、清酒製造業、林業のいずれかの事業を営む事業主は兼業、専業問わず加入できる。各業界の事業主がもれなく加入することで、従業員が会社を移っても積み立てが継続されるようにという制度の目的が達成されることとなる。

<被共済者>
各共済制度の加入企業に雇用される期間従業員が被共済者となり、退職金の積み立て対象となる。中退共や他の特退共との重複加入は認められないが、制度間の移行は可能(退職金の積み立てを継続)。

<掛金>
就労日数1日あたり、建退共は310円、清退共は300円、林退共は470円の掛金を事業主が納付する。掛金の納付は就労日数の証書を取扱金融機関の窓口で購入することにより行い、証書は被共済者に交付される共済手帳に貼付する。共済手帳は被共済者が会社を移っても退職金を請求するまではそのまま使い続ける。
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なお、新規に被共済者となった期間従業員に対しては国からの掛金の助成があり、建退共は50日分、清退共は60日分、林退共は62日分の納付が免除される。

<退職金の支給>
被共済者が退職して55歳に達したとき(または55歳以上で退職したとき)、他業界に移ったとき、傷病により同業界の仕事に就けなくなったとき、常用従業員になったとき、自ら事業主となったときには退職金を請求することができ、掛金の納付期間に応じた金額が機構から支給される。死亡した場合は遺族に退職金が支給される。主な掛金の納付期間ごとの退職金額は以下のとおり。
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なお納付期間については、建退共では21日、清退共では15日、林退共では17日を1ヶ月に換算する。

<加入状況>
2018年3月末時点の各共済の加入事業所数、被共済者数は以下のとおり。
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…というわけで、特に建退共については被共済者数が220万人と、中退共(340万人)にはおよぼないものの、かなりの人数規模ですね(ちなみにiDeCoの加入者はようやく100万人に達したところ)。建設現場にある看板をよく見ると「建退共に加入しています」という標識が張ってあったりします。
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特退共は、業界内で頻繁に会社を移ることを前提に設計された制度であること、掛金が月単位ではなく就労日数単位であることが、他の退職金制度とは異なる大きな特徴です。 そして、この特徴というのは3業界に限らず、アルバイト等で働く非正規社員にもマッチしています。

現在、公的年金において厚生年金の適用拡大が進められていますが、最終的に被用者全体を適用対象とすることとなった場合には、この特退共の仕組みを参考にできるのではないでしょうか。

例えば同じ職場では週に数時間しか働かないようなアルバイト従業員に対しては時間単位で一定の保険料を設定し、その累積時間数を厚生年金額に反映させるといった具合です(手帳と証書による管理はやめたほうがいいと思いますが…)。

社会保険の適用対象を被用者全体に広げていくこととなった場合、事業主側にとっては金銭的な負担もそうですが、事務的な負担も重くなると考えられるため、そこをいかにシンプルな仕組みにして負担を軽減するかということも考えていく必要があるでしょう。