今月10日、厚生労働省より2017年度の「厚生年金・国民年金の収支決算の概要」が公表されました。資料はこちらからダウンロードすることができ、厚生年金と国民年金のそれぞれの収支を確認することができるのですが、保険料収入や年金給付以外にも色々な収入・支出項目があって全体のお金の流れをつかむのが難しくなっています。
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これは、年金制度の運営のために設けられている「年金特別会計」のお金の流れが実際に複雑になっているためであり、それを表しているのが次の図です(PDFファイルはこちら)。
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この図にある「厚生年金勘定」と「国民年金勘定」について、そこに出入りする資金の額を集計してまとめた冒頭の収支決算ということになるわけですが、ごちゃごちゃしててやっぱりよく分かりませんね。

ということで、細かいところは端折って大きな流れが分かるように図にまとめてみました。
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まず、厚生年金勘定について見ると、主な収入は第2号被保険者(会社員・公務員)とその事業主が負担する厚生年金保険料と、消費税を主な財源とする一般会計からの受入、主な支出は厚生年金(報酬比例部分)の支給と基礎年金勘定への繰入です。基礎年金勘定に繰り入れられた資金は基本的にそのまま基礎年金の支給に回されます。

一方、国民年金勘定については、主な収入は第1号被保険者(自営業者等)が負担する国民年金保険料と一般会計からの受入、主な支出は基礎年金勘定への繰入と基礎年金以外の国民年金(付加年金など)の支給となっています。

厚生年金勘定と国民年金勘定ではそれぞれ積立金を保有しており、これをまとめて運用しているのがGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)です。基礎年金勘定にも積立金はありますが、金額が相対的に小さいのと、GPIFでの運用の対象とはなっていないので、上の図では割愛しています。

そして、この図に冒頭の収支決算の金額(時価ベース)を書き込むと以下のようになります(金額単位は兆円)。
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丸い線と矢印で表されているのは運用収益です。運用自体は厚生年金勘定と国民年金勘定をまとめてGPIFで行われていますが、その運用収益についてはそれぞれの勘定の元本に応じて按分されます。

厚生年金勘定には「その他」が図に追加されていますが、これは主に解散した厚生年金基金から返還された資金です。厚生年金基金は企業年金制度の1つでありながら公的年金である厚生年金の一部を代行していましたが、法改正により原則廃止となり、基金の解散によって資金が厚生年金勘定に戻されています。しかし厚生年金基金の解散は既にピークを過ぎており、「その他」の金額は兆円単位で見ればあと1~2年で無視できる水準となるでしょう。

上の図から、運用収益と「その他」を除く収支を読み取ると、厚生年金勘定は収入が44.8兆円、支出が45.5兆円、差引▲0.7兆円、国民年金勘定は収入が3.2兆円、支出が3.5兆円、差引▲0.3兆円と、支出超過となっています。

しかし運用収益等を加味すると、厚生年金は+10.2兆円、国民年金は+0.2兆円の収入超過となり、その分それぞれの積立金は増加して、2017年度末の積立金(時価)は、厚生年金が154.9兆円、国民年金が9.2兆円となっています。今はまだ積立金を積み立てる段階にあるということですね。

ただ今後さらに人口の高齢化が進むことで、積立金はやがて取り崩される段階に入っていくことになります。公的年金制度は、この積立金が100年後において給付費1年分(2017年度でいえば厚生年金45.5兆円、国民年金3.5兆円)程度となることを目標として運営されており、マクロ経済スライドによる給付の調整(減額)がそのための具体的な手段となっています。