昨日、パート労働者に対する厚生年金の適用範囲を拡大するという報道がありました。

まだ決まったわけではなく、来月の年金部会でこのテーマについての検討会の設置を検討し、来年(2019年)中に詳細を検討、2020年に法案提出を目指すとあります。早くて2021年くらいからの実施でしょうか。

厚生年金の適用拡大は2016年10月にも実施されており、このときは30万人規模で加入者が増加しました。今回報道された内容では、賃金(月額)の下限を8.8万円から6.8万円に引き下げること等により200万人規模の増加を見込んでおり、前回よりもかなり大規模な内容となっています(最終的には負担増となる企業側の意見を踏まえて縮小される可能性はありますが)。

今回の適用拡大について「保険料負担の担い手を増やし、少子高齢化の進展で圧迫される年金財政の安定化を図る考え」とする報道もありますが、実際のところこの改正は誰のためになるのでしょうか?

まず、新たに対象となる200万人のうち多くを占めると思われる第3号被保険者(会社員・公務員の配偶者)については、自分で保険料を負担することとなるため目先の手取りは減ってしまいますが、将来受け取れる年金額が増えることを考えれば、長期的にはプラスになる可能性があります。傷病手当金(これは厚生年金ではなく健康保険からの給付ですが)など、もしもの時の保障が手厚くなるメリットもあります。

<2018/9/18追記>
第4回年金部会の資料によると、2016~2017年の適用拡大により新たに厚生年金適用となったのは、第3号よりも第1号のほうが多くを占めているという結果が出ており、上記の200万人についても同様である可能性があります(関連記事はこちら)。
<追記終>

次に、今まで保険料の対象でなかった人たちから新たに保険料収入が生まれることで、将来の年金給付が増えることを差し引いても年金財政にはプラスに作用します。年金財政にプラスに作用するということは、マクロ経済スライドによる年金の減額調整を早く終わらせることができるということです。

つまり、将来受け取る年金額の減少を抑える効果があるということであり、厚生年金の適用拡大はその対象者だけでなく、今の現役世代やこども世代にも広く効果が及ぶことになります。

最後に、セーフティーネットの観点からはこれが最も重要だと思いますが、低収入の第1号被保険者が新たに厚生年金の適用対象となることで、本人が負担する保険料を軽減しつつ将来受け取る年金を増やすことができます。

第1号被保険者の国民健康保険料は収入の大小にかかわらず一定(2018年度は月16,340円)であり、低収入の人にとっては大きな負担となります。実際には未納だったり保険料の一部または全部について免除を受けている人が多いでしょう。結果として将来年金を(少しの額しか)受け取れなくなります。

しかし厚生年金の対象となれば保険料は報酬比例となり(例えば月収7万円ならその18.3%の12,810円)、その半分は企業が負担することとなるため、本人の負担は小さくなります。そして基礎年金に加えて厚生年金も受け取れるようになるため、将来受け取れる年金も増えることとなります。