前回前々回と、確定拠出年金(DC)運営管理機関における営業職員の兼務規制緩和について、その詳細な実施要件を見ていきましたが、兼務規制緩和の案が公表される前からこれを先取りするような動きをしていた銀行があります。りそな銀行です。

りそな銀行では、2017年10~11月に「つみたてプラザ」というiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)専門の個別相談窓口を新設し、大阪枚方と東京八重洲の2ヶ所で営業しています(ちなみに「枚方」はマイカタとは読みません…)。

これまで規制されてきたのは、他の金融商品を扱う支店窓口等の営業職員がDCの運用商品についての情報提供を行うこと(兼務)であり、DC専任の担当者であればこれまでも対応可能でした。ただDCだけを担当する職員を各支店に配置するのは非現実的です。

しかしりそな銀行では全国で2ヶ所限定ながら専門窓口を設け、ファイナンシャルプランナーを配置することで、加入手続きだけでなく運用に関しても窓口での対面相談を可能としています。これらの店舗では「iDeCoの加入、運用のご相談業務中心ですので、現金のお取扱い等一般の銀行窓口業務は行っておりません」としており、兼務規制への抵触を回避しています。

来年(2019年)7月の兼務解禁に向け、りそな銀行ではこのつみたてプラザでの運営ノウハウを各支店での営業展開に活用していくものと思われます。

このほかにも、りそな銀行では、確定拠出年金スタートクラブというオウンドメディアの運営や、中小事業主掛金納付制度(事業主マッチング)に関する情報発信(eBookの刊行やセミナーの開催)など、iDeCoに関するマーケティングを他行に比べてかなり積極的に行っています。

iDeCoを所管する国民年金基金連合会の発表によると、2018年6月の新規加入者は33,476人と再び3万人台を回復し、加入者の総数は94.5万人に達しました。このまま推移すれば8月には100万人の大台に手が届きそうです。

しかし100万人といっても加入可能者全体から見れば2%弱であり、まだまだ世の中に普及しているとは言い難いのが現状です。イノベーター理論に当てはめれば、現在の加入者はイノベーター(革新者)であり、アーリーアダプター(初期採用者。流行に敏感で、情報収集を自ら行い、判断する人)の層には達していません(このあたりは「市場全体」をどうとらえるかでも変わってきそうですが)。

実際、これまでiDeCoの新規加入者の受け皿となってきたのはSBI証券などのネット証券が主であり、金融リテラシーの高い一部の層に限られていたものと思われます。今後、さらにiDeCoの加入者が拡大して普及に弾みがつくかは、それ以外の層への広がりがカギを握っており、りそな銀行の取組みが1つの試金石になるのではと考えます。