昨日の記事では、確定拠出年金(DC)の運営管理機関に義務付けられることとなった運用商品の公表について、その詳細を厚労省のQ&Aから読み解いていきましたが、ではそれを材料として企業型DCを実施する事業主はどのように運営管理機関や運用商品の評価を行えばいいのかという点について、今日は見ていくことにします。

DC導入時の商品ラインナップの比較

企業型DCを導入する際、運営管理機関の選任にあたっては、これまでも複数の委託候補先を評価することが事業主には義務付けられていましたが、その評価項目として「提示されることが見込まれる運用の方法」が追加されました。

つまり、各運営管理機関からの提案を受ける際には、サービス内容や手数料などに加え、商品ラインナップ案の提示も受けたうえで比較検討しましょうということです。当然すぎて今までこの項目がなかったのが不思議です。実際のところ、手数料と商品ラインナップ以外のところで運営管理業務としてのサービスを比較するのは難しいですからね。

今回の制度改正によって運営管理機関ごとに運用商品の一覧が公表されることとなったため、事業主サイドからは「なぜ手数料の最も低い商品をラインナップ入れないのか」といった指摘ができるようになります。

なお、DC導入時の提案の際に示されたラインナップに対して、運営管理機関を選任した後に事業主の意見を踏まえて変更することについては、Q&Aで問題ないことが明記されました。実際、私が関わったこんな事例もあります。

加入者への評価の開示は禁止行為にあたらず

商品一覧の公表により、運営管理機関に対して商品の見直しを具体的に求めやすくなるのは既にDCを導入済みの企業においても同じですが、商品の追加は比較的容易でも除外については手続きやコストの点で困難が伴います。つまり入れ替えにはそれなりのハードルがあるということです。

となると、次善の策としては、より優れた商品を追加するとともに既存の商品も含めた評価結果を加入者に開示することで、加入者自身によりよい商品を選択してもらうということが考えられます。

一方で、事業主や運営管理機関が「個別の商品の推奨」を行うことは法令上の禁止行為とされており、これに抵触しないかが気になるところですが、評価結果が客観的な判断に基づくものであれば問題ないことがQ&Aで示されました。ちなみに、これは私がパブリックコメントで提出した意見とそれに対する回答そのものでもあります。

ただQ&Aの中でも記載されているとおり、積極的に提示されるべきでない商品は本来除外することが望ましく、その観点でいえば、将来的に商品を除外することとなった場合の対応(コストや手続き面でのサポート)についても運営管理機関の評価項目に加えておくことが考えられるのではないと思います。

運営管理機関とのコミュニケーションを重視

運用商品一覧の公表により、少なくとも手数料に関しては事業主(実務上は企業の担当者)自身による比較も可能となりますが、その他の項目、例えば運用実績について他の商品と比較・評価を行うのは実際のところかなり難しいでしょう。

Q&Aに記載されている公表イメージには運用実績の項目もありますが、その欄には資料を添付またはそのリンクを掲載することとあり、それらを1つ1つ確認しながら一貫した基準に基づいて比較しなければならないからです。

Q&Aでも、運用実績の評価については「高い専門的知見を有する運営管理機関に期待されている専門的能力に基づく判断」であるとしており、その上で「その結果については、事業主及び加入者等に対し分かりやすい説明が求められている」とされています。

つまり、事業主に求められているのは、運営管理機関からの報告を受け、その判断根拠に不明なところや納得できないところがあれば説明や改善を求めるというコミュニケーションの部分であり、そのプロセスに対する評価であると言うことができます。

ただ、そうはいってもコミュニケーションを成立させるには最低限の知識は必要ですし、運営管理機関のほうも全ての顧客企業に丁寧な説明を行うだけの余力があるとは思えないので、評価の実効性を確保するには事業主サイドにも相応の体制整備なり第三者のサポートなりが必要になってくるでしょう。