先日の第2回では、会社員が利用できるリタイア後に向けた6つの定期的な積立手段について、受け取りや積立額に関する制約という観点から比較してみました。この制約の大きさは、税制優遇と深く関わっています。

というわけで、今回は税制の観点から各制度(商品)を比較してみました。
1

まず、受け取りや積立額についての制約がない定期預金の自動積立に関しては、収益部分、すなわち預金の利息に対して20%の税金がかかります。これが、通常の資産運用において発生する税金となります。

なお、社内預金については「会社への貸付」となり、その利息は年金などと同じ雑所得として扱われますが、通常の預金と同様に20%が源泉徴収されるようです。

次に、最も制約の大きいiDeCoについて見ると、積み立て時に掛金が全額所得から控除され、その年の所得税・住民税が軽減されます。年収が600万円、課税所得が250万円だったとすると、所得税と住民税あわせて掛金の20%が戻ってきますので、実質8割の負担で資金を積み立てることができます。これは他の制度にはない大きなメリットです。

受け取り時には元本部分と収益部分を区別せず、全体を退職所得(一時金受取の場合)または雑所得(年金受取の場合)として取り扱うこととなりますが、特に退職所得については非課税枠が大きいため(注)、他に受け取る退職金の額が大きくなければ受け取り時にも税金がかからない可能性が高くなります。

注:詳しくはこちらの「3 退職所得控除額の計算方法」を参照。iDeCoについては勤続年数を掛金を納めた年数に置き換えて計算。

同じく受け取り時期に制約のある財形年金貯蓄は利息部分が非課税、個人年金保険については支払保険料の一部または全部が所得から控除され(但し最大で年4万円)、受け取り時には収益部分(支払保険料相当分を超える額)が雑所得として課税されます。

なお、財形年金貯蓄については中途解約による払い出しが可能ですが、その場合は過去5年間にさかのぼって利息の20%が税金として徴収されます(保険型の場合は差益部分を一時所得として課税)。

また、つみたてNISAに関しては、対象となる商品(投資信託)を購入した年から20年間は、運用収益に対する税金がかかりません。受け取りに関する制約がない割には税制面で優遇されている制度だといえます。

従業員持ち株会での株式の購入は通常の資産運用と基本的に同じですが、多くの場合会社から5~10%程度の奨励金が出るため、従業員にとってみれば所得控除と同様の効果があるともいえます(国から補助が出るのか、会社から補助が出るのかの違い)。

ただし奨励金は税制上給与所得として取り扱われるため、10%の奨励金が出ても、それに対して20%の税金(所得税と住民税)がかかるとすると、実質的な補助率は8%ということになります。

ということで、6つの制度(商品を)制約の大きさと税制等の優遇レベルでプロットするとこんな感じになります。
2
※あくまでイメージです。

さて、ここまで6つの制度(商品)について、
  • 誰がどこで利用できるのか
  • 受け取り、積み立てに制約はあるのか
  • 税金の取扱いはどうなっているのか
という観点で比較してきましたが、次回(最終回)は運用方法としてのリターンとリスクについて見ていくことにします。

<関連記事>
リタイヤ後に向けた積立手段の比較~①どんな制度や商品があるか?
リタイヤ後に向けた積立手段の比較~②積み立てや引き出しに制約はあるか?