先週7月27日、第一生命より「企業年金の財政運営の基礎知識」のリニューアル版が公開されました。年金通信のサイトにアップされています。

確定給付企業年金(DB)における掛金計算等の財政運営ルールがテーマごとにまとめられており、DBの担当者が実務を行う上で参考にできる資料です。今回のリニューアルでは2017年1月1日に施行されたリスク対応掛金の導入等の改正が反映されています。

制度改正自体は既に施行されていますが、各DBに実際に新しい基準が強制適用されるのは2018年以降に初めて実施する財政計算(掛金の再計算)からであり、新基準への移行はこれから本格化することとなります。

例えば、2018年3月末に財政再計算の基準日を迎えるDBの場合(財政再計算は一般的には5年に1度)、2018年3月末の財政検証(決算)については従前の基準が適用され、同日を基準日とする再計算(新掛金の適用は2019年4月)から新しい基準が適用されることとなります。2019年3月末以降の財政検証についても新基準に基づいて行われます。

新基準では、リスク対応掛金を導入するかどうかにかかわらず、財政悪化リスク相当額の計算が必要となります。財政悪化リスク相当額については、企業年金の財政運営の基礎知識の第2章テーマ11に解説があるとおり、標準方式では基準日時点(上記の例では2018年3月末)の年金資産額に対して、資産種類(日本株式等)ごとに決められた係数を乗じて算出することとなります。

そして、この財政悪化リスク相当額の範囲内で財政上の「余裕」を持たせることが認められ、それに相当するリスク対応掛金の設定が可能となります(設定は任意)。リスク対応掛金については第3章テーマ16で解説されています。

また、財政悪化リスク相当額が導入されることにより、責任準備金の考え方も従来とは異なり、財政悪化リスク相当額分の幅をもって伸び縮みすることとなります(詳細は第4章テーマ19で解説)。なお、この考え方はリスク対応掛金の設定有無にかかわらず同じです。

したがって、上記の例でいえば2019年3月末以降の財政検証においては、資産運用等による財政上の剰余・不足が生じても、一定の範囲内であれば責任準備金の伸び縮みに吸収されるため、財務諸表には現れません。この点に関しては、制度改正により財政状況の変化の実態がつかみにくくなったといえます。

したがって、第4章テーマ25の利源分析(剰余金・不足金の分析)に書かれているとおり、例えば、従来基準による責任準備金に置き換えて考えることが必要となります。あるいは、それより前の2011年度以前の基準に従い、責任準備金(旧基準)を数理債務と特別掛金収入現価の両建てにして考えてもよいでしょう。

参考までに、それぞれの違いを簡単に図示すると以下のようになります。
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