以前、「イグジットマネジメント」について、その意味するところを私なりの解釈で記事に書きましたが、これと対になる言葉として「リテンションマネジメント」があります(リテンション=引き留め、定着。すなわち、優秀な人材の流出を防ぎ長く会社に貢献してもらうこと)。

人手不足の状況にある昨今では、イグジットマネジメントよりもよく使われているかもしれません。

退職金には、加算退職金のような形で離職(Release)を促進する機能がある一方で、一定期間の勤務を条件として支給することで定着(Retention)を図る機能もあると一般には言われています。実際、退職金制度の多くは、短期間で自己都合退職した社員には不支給としたり支給額を抑える仕組みになっています。

しかしそれが本当にリテンションにつながっているかというと、特に若手社員に対してはほとんど機能していないのが実情でしょう。そもそも自社の退職金についてよく知らないことが多く、仮に知っていたとしても、それで転職を踏みとどまらせるほどの効果が期待できるとは思えません。むしろ退職金の支給要件を満たしたタイミングで出ていってしまう可能性もあります。

実際のところ、自己都合退職時の退職金の不支給や抑制は、社員のリテンションというよりも、中途退職によって会社が回収できなかった採用や育成のコストを埋め合わせるためのものという意味合いが強いのかもしれません。

もし、一定期間(例えば10年)の勤務に対するインセンティブ報酬として機能させたいなら、10年勤務した時点で退職の有無にかかわらず相応の金額(例えば100万円)を支給し、あわせて10日間の有給休暇を付与するくらいにしないと、若手社員には報酬として認識されないでしょう。

一方で、在職期間中のことだけに着目した施策ではリテンションマネジメントとしては不十分です。終身雇用が崩れる中で人生100年時代を生きていくためには、退職したあとが重要になってくるからです。

「このまま今の会社にいて自分の将来は大丈夫か?」という若手社員の不安を解消するためには、今の会社でキャリアを積んだ後にどのような進路があるのか、社外への転進も含めて将来像を描けるようにしておくこと、つまりイグジットマネジメントが重要な意味を持つことになるでしょう。

退職金についていえば、離職後、引退後の生活等の資金を考えたときに、多様なキャリアパスに対応できる設計が求められます。

仮に、社内で十分なキャリアを積み、会社に対して大きく貢献した社員が中途退職してしまったとしても、それは「卒業」として受け入れ、1つのロールモデルとして若手社員に提示するくらいの姿勢が、これからは必要になってくるのではないでしょうか。