年金時代」という年金や社会保険を専門に取り扱うWEBメディアがあるのですが、こちらに「次期年金制度改正の課題を考える」と題する全3回の記事が掲載されています。

その1:マクロ経済スライドの見直し(キャリーオーバーの導入)の振り返り
その2:マクロ経済スライドの優れた機能の再認識
その3:ポピュリズムにどう対抗していくか

社会保障審議会年金部会の委員を長く務めてきた権丈善一氏(慶応大学商学部教授)と、マクロ経済スライドの仕組みを導入した2004年の制度改正時に厚生労働省年金局数理課長を務めていた坂本純一氏による対談記事です。

やや専門的な内容にはなりますが、政治やメディアの動きに翻弄されそうになりながらも年金制度の改正を進めてきた経緯がよく分かり、非常に興味深い記事です。制度設計そのものよりも、その後のコミュニケーションや合意形成に労力を必要とする点は、企業における退職金制度の改定にも共通するものを感じます。

また、タイトルにある「次期年金制度改正の課題」に関しては、所得代替率の基準年齢の見直しがトピックにあがっており、この4月からスタートした2019年度の財政検証の議論の中でも注目すべき点になると思います。

現在導入されているマクロ経済スライドの仕組みでは、労働力人口の減少や寿命の伸びを考慮して年金額を年々調整していく(物価や賃金よりも小さい伸びに抑えていく)こととなっており、その下限は現役世代の手取り収入の50%とされています(この割合を所得代替率と呼ぶ)。

前回の2014年の財政検証時における所得代替率はモデルケースで62.7%となってますが、下限の50%にまで引き下げられてもまだ年金財政の収支が釣り合わないという事態になったときには、保険料を引き上げるか、給付水準を引き下げるかの検討を改めて行うこととされています。

そしてこの所得代替率を計算するうえでの基準年齢は65歳となっており、65歳に受給を開始するケースをモデルとして算出されています。しかし、今後さらに寿命が伸びていけばその分だけ1人1人の年金受給期間は長くなりますから、開始年齢を65歳に固定したままだと当然年金額は減らしていかざるを得ません。

この問題に対して、対談の中では、基準年齢を実際の平均受給開始年齢とすることで所得代替率50%以上を維持するという考え方が示されています。

現在でも受給開始年齢は本人の選択により70歳まで繰り下げることが可能となっており、その場合は繰り下げた期間に応じて年金額が増額されますから、基準年齢を引き上げれば所得代替率も上昇し、保険料を今以上に引き上げる必要がなくなります。

例えば寿命が10長くなったときに、働く期間はそのままで、年金の受取期間を10延ばしていては制度がもたなくなるのは明らかであり、10のうち7程度は働く期間、残り3程度を年金の受取期間の延長に充てるのが妥当なところでしょう。

そうしたことを踏まえれば、上記の基準年齢の見直し(引き上げ)は考え方として非常に自然なものだと考えます。

ただこれを実現するには、国民に年金の受給を65歳より後に繰下げる選択をしてもらわなくてはいけませんから、対談記事にもあるように、65歳以降も働き続けられるような環境を作っていくことが最大の課題となるでしょう。