先月(2018年6月)末、厚生労働省の研究事業として実施された確定拠出年金(DC)についての研究報告書が公表されました。概要や本文についてはこちらに掲載されています。

研究課題は「確定拠出年金の個人型加入者への投資教育と企業型確定拠出年金の運営管理機関モニタリングについて」であり、報告書の内容は、5月にパブリックコメントで公表された、運営管理機関の評価について定めた省令・通知改正案の策定にあたっての参考とされています。

<関連記事>
「加入者本位」を打ち出した確定拠出年金運営管理機関と運用商品の評価基準
運営管理機関と商品評価の実効性を確保するために
DC運管評価のパブコメに意見を提出しました

<Pmasコラム>
DC運用商品の見直しを迫られる事業主と運営管理機関~厚生労働省より運営管理機関の評価基準案が公表される

本報告書の作成にあたり行われた企業型DCの実態調査は、初めて代表事業主以外の実施企業を対象に含めたものとなっており、興味深い内容となっています。

企業型DCには、複数の企業が同一の規約により制度を運営しているものがあり、特に総合型DCと呼ばれるタイプでは商品ラインナップ等がパッケージ化されており、中小企業を主な対象として不特定多数の企業が参加しています。ちなみに、当社が入っているDCも総合型DCです。

総合型DCのような複数事業主により運営されるDCの場合、(形の上では)代表事業主(1社)が全体を代表して運営管理機関と連携し、規約の申請などを行うこととなります。

但し、運営管理機関が主体となって設けられた総合型DCの場合、もともと相互に関わりのない企業が参加していてコミュニケーションの機会もほぼないため、非代表事業主は自ら制度を実施しているという意識が薄く、商品ラインナップ等に関する意見や要望があったとしても、その意向を反映させることは事実上困難な状況にあります。

(注)複数事業主により運営されるDCには、同一の企業グループにより運営されるもの(連合型と呼ばれる)もあり、連合型DCにおいては企業間の連携はある程度図られているものと考えられる。

こうした状況は今回の調査結果にも表れており、2014年以降の継続教育の実施について、「実施していない」「実施するつもりはない」とする回答は、代表事業主(1社単独で企業型DCを実施しているケースを含む。以下同様)が41.0%であるのに対して、非代表事業主では60.6%に上っています。

また、運営管理機関とのコンタクト状況については、年1回以上の訪問があるという回答が、代表事業主では85.0%であるのに対して、非代表事業主では15.0%にとどまっており、コミュニケーションの機会が限られていることが分かります、

非代表事業主と代表事業主との関係という観点では、商品の運用状況の報告について「代表事業主に任せている」という回答が27.2%、代表事業主とのコンタクトについては「導入時以降、訪問による面談はない」という回答が46.9%、「問い合わせ窓口や担当者がよく分からない」も17.0%あります。

今回の調査では、2017年4月現在の非代表企業21,116社のうち、関係者の協力により発送先を把握してアンケートを発送できたのは6,513社(そのうち回答があったのは1,797社)に過ぎず、ここから漏れている企業では、運営管理機関や代表事業主とのコミュニケーションはさらに希薄であると予想されます。

こうした状況を踏まえ、研究報告書では、
 なお、総合型DC に関しては、前述のとおり、制度や根拠法令自体を単独型DC と分けるべきとの意見が研究会で出されていたが、特に本項のような事業主と運営管理機関のコミュニケーションや情報提供に関しては、総合型DC の運営実態に沿った、何らかの抜本的な対応も検討の必要性があるものと思われる。
 例えば、コミュニケーションや情報提供に関しては、総合型DC では、代表事業主を経由した手法を認めること、或いは、集合的または一斉発信的、Web ページ等への掲示による等の手法を認めることを通知等で明示するという対応である。
と指摘しています。

5月のパブコメでは総合型DCに対する特段の対応は示されていませんが、行政側もおそらく課題としては認識しているものと思います。総合型のDB基金(確定給付型の企業年金基金)に対しては、ガバナンス強化のための一連の改正が行われており、今後DCに関しても何らかの改正が行われることになるのではと考えます。