7月6日、公的年金の資産運用を行っているGPIF(年金積立金管理運営独立行政法人)から2017年度の運用状況が公表されました。


レポート(業務概況書)はこちら、理事長による記者会見と質疑応答の動画はこちらにアップされています。

2017年度の運用利回りと運用収益額は、以前こちらの記事で紹介した4月時点の試算結果とほぼ同じで、+6.9%、10.1兆円となりました。

公的年金の運用というのはマイナスが出ると叩かれますが、調子がいい時はあまり注目されないもので、これを書いている時点で記者会見と質疑応答の動画はそれぞれ101回、68回しか見られていません。西日本の豪雨と重なったこともあってニュースでも出てきませんね。

記者会見では、2017年度の運用状況について説明されたのは30分のうち最初の10分程度で、スチュワードシップ活動やESG投資について約10分、運用受託機関の選定や評価について約5分、オルタナティブ投資について約5分という配分でプレゼンが行われていました。

150兆円を超えるような巨額の資金を運用するGPIFでは、それ自身が市場の一定部分を占めるため、ESG投資とかアクティブ運用とか言っても全体として市場を大きく上回るような結果を残すのは困難になります。

したがって、市場を上回るリターンを獲得するというよりも、こうした活動を通じて市場全体の持続可能な成長を後押しすることのほうが、超長期の投資家である”公的”年金としては重要なこととなります。そうした考え方を質疑応答から読み取ることができました。

この点については、資産規模についても考えるべき運用期間についてもGPIFには遠く及ばない企業年金では、考え方が違って当然だと思います。

<参考記事>企業年金自身のスチュワードシップ責任を考えよう

なお、ESG投資に関しては、次年度よりその取り組み状況や結果について報告を行い、外部からの批判等も踏まえつつ継続して改善を図っていく考えが記者会見の中で示されました。次回からはこちらの報告内容にも注目したいと思います。

さて、記者会見のあと30分ほど行われた質疑応答では報道機関の記者からの質問が相次ぎましたが、質問の内容に各機関のレベルが表れていて、それはそれで興味深いものでした。「官製相場」について質問した朝日新聞の記者は全く相手にされていませんでした(^_^;)

また、日経の記者は国内株式の資産構成割合が基本ポートフォリオに定めた25%に達したことで、今後の投資行動に与える影響を質問していましたが、理事長からの回答は「基本ポートフォリオには許容乖離幅(国内株式は±9%)が定められており、25%に達したからといって何か変わるわけではない」というものでした。

しかし実際には以下のような記事が出ています。まぁ結論ありきの質問だったということなんでしょうね。