先日、国税庁より『「税務行政の将来像」に関する最近の取組状況』が公表されました(こちら)。昨年取りまとめられた「税務行政の将来像」に対し、具体的に実現した取組や施策のイメージが具体化したものが紹介されています。

このうち、納税者(個人)の利便性向上に向けた取組例として以下の3つがあげられています。
  1. スマホ・タブレットからの電子申告(2019年1月~予定)
  2. e-Tax利用手続きの簡便化(2019年1月~予定)
  3. 年末調整手続きの簡便化(2020年10月~予定)

スマホ・タブレットからの電子申告

電子申告とは、Web上で必要事項を入力することで申告書(データ)を作成し、それをそのままインターネットで送信することで、紙の申告書を提出することなく確定申告ができる仕組みです。e-Taxとも呼ばれています。

現在はPCでの作成を前提とした画面構成となっており、スマホには対応していませんが、「利用者の多い一般的な給与所得者の医療費控除又はふるさと納税等による還付申告を対象としたスマートフォン・タブレット専用画面を開発し、電子申告の普及を進めます。」とあります。

ただ私の経験上、医療費控除に関しては、領収書の束からのデータ入力にはエクセルの集計フォームを使うのが便利なので、スマホのメリットが生きるのは、件数は少なくても入院や手術で高額の医療費がかかったケースに限られそうです。

一方でふるさと納税のみの申告ならスマホで手軽にできると便利かもしれません。ただ5自治体までのふるさと納税で、ふるさと納税のほかに申告するものがない場合には、「ワンストップ特例」を利用することで確定申告を行わなくても住民税の控除を受けられます。

e-Tax利用手続きの簡便化

私はe-Taxを使って確定申告をしていますが、事前にマイナンバーカードを取得し、ICカードリーダライタを購入しておく必要があります。さらにe-Tax用のIDとパスワードも必要となるため、入力を求められたときに、どれのことなのか分からなくことがあります。

しかし来年(2018年分)の申告からは、マイナンバーカードとICカードリーダライタがあればe-Tax用のIDとパスワードは不要になるということで、少しだけ手続きが省けそうです。また、「スマホでもICカード読み取り機能によりマイナンバーカードでの手続きを可能とすることを検討」とあります(これができないとスマホ用の画面を開発する意味がないですよね)。

また、マイナンバーカードがなくても(作らなくても)、税務署での本人確認(対面)によりe-Tax用のIDとパスワードを取得することで利用できるようにするということです。ただ事前に税務署に行かないといけないので、それだったら役所に行ってマイナンバーカードを作ってもいいかなという気もします…。

年末調整手続きの簡便化

年末調整の際は、本人や扶養家族の情報のほか、保険料等の金額を証明書から手書きで申告書に転記しているケースが多いと思いますが、国税庁のほうで「年末調整控除申告書作成システム」を用意し、これに入力(または証明書データを取り込み)することで、オンラインでの勤務先提出を可能にするということです。

これにより、記入の手間や間違いを減らせるほか、会社側も検算や書類保管の負担を減らすことができそうです。

ですが、これに近いシステムは実はすでにあったりして、例えば当社ではSmartHRにより申告書をWebで作成し、最後捺印するときに印刷する流れになっています(最終的には証明書類を添付して紙で提出)。したがって、当社のようなケースでは、簡便化の恩恵を受けるのは従業員よりも会社側のほうにありそうです。

どうせなら年末調整時に作成されたデータを確定申告にも自動的に反映できるようにしてもらえると便利だと思うのですが、今回はそこまでの予定はなさそうですね。

今回示された個人向けの取組例は「簡便化」としてはちょっとしたものですが、今後さらに効率化が進んでいくことを期待したいと思います。