先日、パブリックコメントで公表された企業型確定拠出年金における運営管理機関の「評価基準案」に関しては、以下の記事でも取り上げたところですが、せっかくなので意見を提出することにしました(個人として)。


提出した意見は以下のとおりです。
 今回示された法令解釈通知等の改正案は、運用商品の公表について定めた省令改正案とあわせ、企業型確定拠出年金における運用商品の選定及び加入者への説明に関して、加入者の利益の最大化を図るという運営管理機関及び事業主の忠実義務が十分に果たされていない現状を踏まえたものと理解しており、問題の改善につながる改正内容であると評価している。
 そのうえで、今回の改正に実効性をもたせるためには、以下のような対応もあわせて実施することが必要であると考える。

1.実施状況のモニタリング

 事業主による運営管理機関の評価・見直しはあくまで「努力義務」となっていることから、実際には評価を実施しない事業主が多くなる可能性もある。業務報告書や監査等を通じ、事業主による評価の実施の有無や評価の適正性、運営管理機関の対応状況についてモニタリングを行い、実効性を検証したうえで、さらに踏み込んだ対応が必要ないか検討すべきである。

2.運用商品の除外要件緩和・運営管理機関変更の円滑化

 運用商品や運営管理機関の評価を実施した結果、商品の除外や運営管理機関の変更が望ましいとされた場合でも、事業主がこれを実行に移すことを躊躇するのは容易に想像ができる。現状、商品の除外にあたっては各加入者からの同意取得手続きが必要であり、3分の2以上全員未満の同意による除外の際には、運用継続部分と売却部分を対応する掛金拠出時期に応じて区分するという複雑な対応が求められる。また、運営管理機関の変更の際には、運用中断期間の発生により加入者が不利益を被る可能性がある等の課題がある。
 こうした点を踏まえ、商品の除外については、将来の掛金に対する除外に関しては労使合意のみで可能とする(商品数の上限規制に係る本数にもカウントしない)など、要件を緩和することで実行される可能性が高まるものと考える。運営管理機関の変更についても、行政としてその障壁を下げるための対応を運営管理機関と協議しつつ進めていくことが必要であると考える。
 運営管理機関の評価が適正に行われるようになれば、運営管理業務からの撤退や、運営管理業務の集約が進むことも想定されるため、その点からも運営管理機関変更の円滑化は重要である。

3.総合型DCにおける運営管理機関の対応

 不特定多数の企業が同一の規約で実施するいわゆる総合型DCにおいては、代表事業主のもとに各実施企業が連携して運用商品や運営管理機関の評価を実施するのが本来の姿であるとは考えるものの、実施事業所間のコミュニケーションの機会が皆無である現状ではそのような対応は望めない。したがって、運営管理機関の側から、各事業主に対して、運用商品等に対する意見、要望を提出したり、その内容を実施事業所間で共有する機会を提供することが必要ではないかと考える。
 また、各事業主にとって運用商品や運営管理機関を変更するより現実的な方法は他の総合型DCプランへの乗り換えであり、総合型DCプラン間の比較可能性を高めるため、商品ラインナップや手数料の開示を進めるべきである。

4.加入者への評価結果の開示が行為準則における禁止行為に当たらないことの明確化

 仮に上記2,3のような対応が進んだとしても、運用商品の除外や運営管理機関の変更、プランの乗り換えには事務的、財務的な負担が伴うため、現状の変更を促すような評価結果を望まない事業主は、評価の実施自体に後ろ向きになることが想定される。また、中小企業においては委託可能な運営管理機関やプランが限定され、商品や運営管理機関の見直しが事実上困難なケースも想定される。
 しかし、結果として商品等の見直しが行われない場合でも、評価結果を加入者に開示し、説明することで、加入者の運用の改善(商品選択の見直し)を促すことは可能であり、こうした観点で評価の実施を促すことも重要であると考える。一方で、事業主が加入者に対して「特定の運用の方法について指図を行うこと又は行わないことを勧めること」は行為準則において禁止されており、この点が評価結果を加入者に伝えるうえでの障害となる可能性がある。
 したがって、「各運用商品に対する公正な評価結果を加入者に対して明確に伝えることは行為準則における禁止行為に当たらない」ということを明示しておくべきである。

運用商品や運営管理機関の評価が当たり前に行われるようになれば、コンサルティングの機会も広がるだろうという思いもまぁもちろんあるわけですが、それは置いておいても、上記4のような観点は最終的に加入者の利益につなげていくための現実的な手段として重要だと考えています。