先週、企業年金連合会から2017年度の年金資産運用状況が公表されました(こちらに掲載)。

連合会では、確定給付型の企業年金を実施していた会社を中途退職したり、制度の終了によって資金の積立が続けられなくなった加入者に対して、その資金を受け入れ、運用し、老後に年金として支給する役割を担っています。将来、約束通りに年金を支給していくために、資産運用は非常に重要な要素となります。

連合会が支給する年金には、厚生年金基金由来の代行部分(国の厚生年金の一部)を引き継ぐ「基本年金等」と、純粋な企業年金である「通算企業年金」とがあり、年金資産の運用もそれぞれ区分して行われています。

過去の経緯から資産規模で見ると圧倒的に「基本年金等」のほうが大きいのですが、厚生年金基金は原則廃止となり、現在資産の受け入れを行っているのは基本的に通算企業年金のほうであることから、今回は通算企業年金の資産運用状況について見ていくことにします。

2017年度の運用結果

通算企業年金の平均予定利率は2%強であり、長期的にこれに見合った運用収益を確保するために、連合会では運用の基本方針で政策アセットミックス(基本資産構成)を「債券80%:グローバル株式20%」と定めています。

これに対して、2017年度の実際の運用状況は、年度末時点の資産構成は「債券79.6%:グローバル株式80.4%」とほぼ計画通りとなっており、修正総合利回りは+3.23%、時間加重収益率(キャッシュフローの影響を除いた純粋な運用収益率)は+3.33%と、予定利率をやや上回る結果となっています。ベンチマークに対しても全体で+0.63%と、超過収益を確保しています。

資産別の利回り(時間加重収益率)は、グローバル株式が+13.75%、債券が+0.78%であり、超低金利による債券利回りの低迷を株高で補う形になっています。中でもグローバル株式のアクティブ運用のベンチマークに対する超過収益率は+6.90%と非常に好成績となっています(それだけアクティブリスクを取っている結果とも言えます)。

これまでの運用結果の推移

では2016年度以前の運用結果(時間加重収益率)はどうだったのか、通算企業年金としての運用を全体から分離した2014年度以降の成績をまとめてみました。
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この間の資産運用に関する最も大きな出来事は、やはり2016年2月(年度でいうと2015年度)の日銀によるマイナス金利政策の導入でしょう。

連合会では、債券運用については一応ベンチマークを定めてはいるものの、運用方針としては1.5%という”定率”で長期目標を掲げており、金利の低下により債券ベンチマークが大きく上昇したこの年は超過収益率が大きくマイナスに振れています。

その後は超低金利の運用環境下で債券の利回りは長期目標である1.5%を下回って推移しており、資産全体で2%強の予定利率を確保できるかどうかは株式のリターン次第という状況です。

連合会では2017年4月より通算企業年金の予定利率を受け入れ時の年齢に応じて1.5%~0.5%に引き下げていますが、過去に受け入れた資金については従前の利率が維持されるため、全体の平均予定利率はすぐには下がりません。

これまでのところは平均予定利率以上の運用ができていますが、株価次第の側面もあり、楽観はできない状況と言えます。

共同運用事業としての年金の資産運用

連合会の通算企業年金の資産運用は、共同運用事業としての年金資産運用という側面も持ち合わせています。共同運用事業とは、希望する確定給付企業年金から委託を受けて年金資産を預かり、連合会自身の通算企業年金と一体で運用を行う事業です。詳細については以下の「Pmasコラム」にて解説しています。

企業年金連合会の共同運用事業について~1.共同運用事業の概要
企業年金連合会の共同運用事業について~2.企業年金連合会の運用方針と運用実績
企業年金連合会の共同運用事業について~3.共同運用事業のメリットと留意点

上記コラムの3でも書いているとおり、各企業年金にとっての共同運用事業のメリットは運用コストの低さにあります。

一般に、年金資産額に対する運用コストの割合は資産規模が大きくなるほど低くなり、基本年金も含めると10兆円以上の資産を運用する企業年金連合会の運用コストは一般の企業年金よりもかなり低くなっています。共同運用事業を利用することで、その低コスト運用に乗っかることができるというわけです。

共同運用事業は2016年10月にスタートした仕組みですが、あまり認知されておらず、利用は広がっていないようです。個別の企業年金のニーズに応じたカスタマイズはできないなど、いろいろと融通が利かない点はありますが、既存の運用の一部を置き換える余地がないか、運用方針や目標、コスト、実績を比較検討してみる価値は十分にあると思います。