先月29日、自民党の「人生100年時代戦略本部」が取りまとめた
「2024年問題」:人生100年時代を生きる将来世代の未来を見据えて - 「選択する社会保障」 -
と題する提言が公表されました。

2024年には日本における50歳以上の人口が5割を超えることから、これを「2024年問題」と名付け、社会保障制度の在り方を再構築する提言となっています。50歳以上の人口が50%になったからといってそこで何か急に問題が発生するものではありませんが、制度の見直しを実行していく目標期限的な意味合いで提示したかったのかもしれません。

ではその提言の内容がどんなものなのか、見ていきたいと思います。

年金制度の見直し

  1. 受給開始年齢について70歳以降の受給開始を選択可能とする。
  2. 平均受給開始年齢における所得代替率が50%を下回る場合は保険料を引き上げる仕組みにしておく。
  3. 在職老齢年金を縮小または廃止する。
  4. 雇用形態にかかわらず企業で働く人は全員社会保険に加入できるようにする。
  5. (4に関連して)所得の低い勤労者の保険料は減免しつつ事業主負担は維持する。
1については政府の高齢社会対策大綱にも盛り込まれおており、今後厚生労働省の年金部会で具体的な議論が進められる見込みです。

また3の在職老齢年金については、2021年度(女性は2026年度)以降の60歳到達者は厚生年金の報酬比例部分も含めて支給開始年齢が65歳になることから60歳代前半の在職老齢年金というのはなくなり、60歳代後半の支給停止基準は年金+給与の月額が46万円超とあまり厳しくないことから、このままいっても自然と縮小していくことになります。

次に2に関しては、現在の公的年金制度におけるマクロ経済スライド(年金額の実質的な水準引き下げ調整)は、65歳受給開始での所得代替率50%を下限としており、将来の年金財政の均衡のために50%を下回るような調整が必要となった場合には仕組み自体を再検討することとなっています。

上記2の提言は、所得代替率を65歳ではなく平均受給開始年齢で50%以上確保することを目標とし、受給開始年齢を65歳より後に遅らせる(すると年金額は増加して所得代替率はアップする)ことができるように、就労可能年齢を引き上げたり、企業年金を整備させようという趣旨になっています。

4,5については年金だけではなくて、医療保険(健康保険)等を含めた社会保険全般の話になりますが、本人の保険料負担を減免しつつ社会保険の適用を拡大することで、パートで働く第3号被保険者の就労調整を防ぐと同時に将来の年金給付を厚くすることがねらいです。

また、非正規雇用で社会保険が適用されていない第1号被保険者の保険料(国民年金保険料・国民健康保険料)負担を軽減すると同時に、将来の年金給付を厚くすることにもつながるでしょう(一方、企業にとっては保険料負担が増すことになります)。

なお下記によると、別途自民党がまとめている提言には、低年金者に対する住宅の提供という現物支給の案も盛り込まれているようです。

医療保険(健康保険)制度の見直し

現行の高齢者医療保険制度では、医療費の自己負担割合について、70歳未満は現役世代と同じ3割としているのに対して、70歳以上は原則2割、75歳以上は原則1割とし、現役並みの所得のある人に限って70歳以上でも3割負担としています。

今回の提言ではこの「原則」と「例外」を逆転させ、年齢にかかわらず自己負担割合は原則3割とし、低所得者に限って2割または1割とすることとしています(但し制度改正時に1割、2割であった人はそのまま)。また、「低所得者」の取り扱いには保有資産も考慮することとしています。


今回の提言はあくまで自民党内でまとめられたものですが、
  • 70歳以降の年金受給繰下げ
  • 被用者の社会保険適用拡大
  • 高齢者の医療費自己負担割合の引き上げ
といった点はこれまでも政府内で議論されてきたことであり、またその方向で徐々に制度改正が進められてきていることから、近い将来(概ね5年以内)に実施される可能性は十分にあるものと考えます。