先週、「日本の人事部」が主催するHRカンファレンスに行ってきました。受講したのは「変化の時代のキャリア自律と企業のキャリア支援」です。講師の高橋俊介さんは慶応大学大学院の特任教授ということですが、ググってみたところワイアット(現タワーズワトソン)の社長まで務めていた方のようです。どうりで教授っぽくありませでした(いい意味で)。

受講から1週間たって記憶が薄れているところもありますが、当日のレジメとメモを見ながら内容を振り返ってみたいと思います。

先を見通すのはできない前提で
  • 例えば、AIで失われる仕事が出てくるのは分かっているが、どの仕事がいつなくなるのかを企業が見通すことは困難。個人が見通すのはさらに困難。したがって、先は見通せない前提でキャリア形成を考える必要がある。
  • キャリア自律は人材求心力につながる。若手社員の採用、定着に重要。自律の促進が転職につながるという懸念があるかもしれないが、離職率は低ければ低いほどよいというものではなく、「健全な離職率」というものがある。

「キャリア自律支援」が意味するもの
  • 先が見通せない以上、キャリアを一歩一歩のぼる全員に共通の「階段」を会社が用意することはできない。人それぞれのモノサシにより自分らしさを発揮することが重要。
  • 5年後のキャリアを考えるとか無意味。採用面接でそのような質問をする面接官にはあなたはどうなのかと聞きたい。
  • シニア活用には個別性への対応と支援が必須だが、バブル入社世代は仕事観が希薄であり、「自律」が待ったなしの大きな課題。

自分らしいキャリアを築いていくには
  • 目標より習慣…キャリアは予定どおり作れるものではなく、よい習慣が自分らしいキャリアに導く。
  • キャリアは一直線に伸びていくものではなく、必ず何度か転機が訪れる。そのとき、また0からキャリアを築き上げるのでは成長できない。本質を学ぶことで普遍的な土台を積み重ねていくことが重要。
  • 知識だけでなく、自分なりの見解をもつこと。日本人は知識は豊富でも自論を持たない。自分より知識のない外国人の意見に反論できないことがよくある。
  • 先が見通せいない以上、ネットワークづくりは目標から逆算して効率的にやろうとしても計画通りにはいかない。ある程度の「ムダ」も必要。
  • 長期的なキャリアを具体的に見通すことはできない一方で、より短期的なスキル・能力開発に対しては具体的なアクションプランをもって取り組むことが重要。

企業はキャリア自律推進にどう取り組むべきか
  • 会社としてのキャリア自律支援の考え方を経営目線で確立し、社員に発信する。
  • 個人の気づき、節目感の醸成、内省の機会を作り、必要とする人には個別の支援を行う。
  • 主体的な学びの機会、キャリアチェンジの機会、社外活動の機会など、多様な機会を提供する。これさえやればいいというのはなく、多面的な取り組みが必要。

最後のところは「会社としてキャリア自律をどう捉え、何を社員に求め、会社はどんな支援をすべきか」、具体的な回答を期待していた受講者もいたかもしれませんが、現状を踏まえ、それを考えることがまさに各社に課せられた課題だということでしょう。

上にも書いたようにキャリアの「自律」はプレ・シニア世代であるバブル入社世代にとっての待ったなしの課題とされていますが、そのためにはまず会社(経営・人事)が「自論」を持つことが必要であると考えます。