今週21日、確定拠出年金法施行規則等についての改正案(パブリックコメント)が公表されました。
今回の改正案が出された経緯、趣旨については、意見募集要領に以下のように記載されています。
 確定拠出年金法等の一部を改正する法律(平成28 年法律第66 号)による改正後の確定拠出年金法(平成13 年法律第88 号)第7条第4項において、確定拠出年金運営管理機関間の競争を促し加入者等の利益を確保するため、運営管理業務を委託する事業主は、委託する確定拠出年金運営管理機関を5年毎に評価し、検討を加え、必要に応じてこれを変更することが努力義務とされました。
 これを受けて、確定拠出年金運営管理機関によって選定された運用の方法の相対的な比較及び評価を可能とし、事業主による確定拠出年金運営管理機関の評価(運用の方法のモニタリングを含む。)の実効性を確保すること等のため、確定拠出年金運営管理機関に対して、選定した運用の方法の公表を求める確定拠出年金法施行規則の一部を改正する省令案及び確定拠出年金運営管理機関に関する命令の一部を改正する命令案について、下記のとおり、御意見を求めます。
2016年の法改正により、企業型の確定拠出年金を実施する事業主には定期的に運営管理機関の評価を行い、必要に応じて変更する努力義務が課されたわけですが(施行は2018年5月1日)、その評価基準が今回の改正案で示されることとなりました。

その内容を見ると、厚生労働省が評価項目として商品ラインナップの選定を特に重視していることが分かります。逆に言えば、現在実施されている企業型の確定拠出年金の商品ラインナップには問題のあるものが多いということです。

今回の改正案では、加入者等の利益の観点から、法律に定められた事業主及び運営管理機関の忠実義務の内容に運用商品についての詳細な確認事項や定期的な見直しを盛り込むとともに、事業主には運営管理機関の評価の内容を加入者等に開示することを求めています。

さらに、事業主による商品の相対評価が可能となるように、運営管理機関に対しては企業型確定拠出年金に提供している運用商品の情報をインターネットで公表することを求めています。今までブラックボックスだった各運営管理機関の商品ユニバース(提供可能商品の一覧)や信託報酬(運用の手数料)を明らかにするものであり、非常に画期的な内容だと言えます。

<2018/5/24追記>
意見募集要領及び条文を改めて確認したところ、公表を求めるのは「提供可能商品の一覧」ではなく、「企業型DCの商品ラインナップに選定した商品の一覧」が正しそうです。
<追記終>

以下、今回の改正案で示された具体的な内容を見ていきます。

事業主の忠実義務の内容として盛り込まれた項目
運営管理機関の選任にあたり、加入者等の利益の観点から、例えば下記事項について運営管理機関から合理的な説明を受けているか。
  1. 商品ラインナップの全てまたは多くが同一グループ会社の商品である場合、それが加入者等の利益のみを考慮したものであるといえるか。
  2. 同種の商品と比べて明らかに運用成績の劣る投資信託、他の金融機関が提供する商品と比べて利回りや安全性が明らかに劣る元本確保型商品、同種の商品と比べて手数料や解約時の条件が良くない商品について、それが加入者等の利益のみを考慮したものであるといえるか。
  3. 商品ラインナップの手数料について、詳細が開示されていない、もしくは一覧性がないなど加入者にとって分かりにくくなっている場合に、なぜそのような内容になっているか。
  4. 商品の追加や除外の依頼を拒否された場合、それが加入者等の利益のみを考慮したものであるか。
…こうした点が盛り込まれたということは、残念ながら現状はこれとは裏腹になっているということです。

運営管理機関の忠実義務の内容として盛り込まれた項目
運用商品の選定や加入者への情報提供(説明)について、制度発足時においては適正なものであっても、定期的な見直しを行わなければ期間の経過によりそうでなくなる可能性があることから、事業主に対する説明責任を積極的に果たし、事業主との意見交換等を踏まえつつ、定期的に自己の運営管理業務を点検・確認し、必要に応じて見直しを行うこと。

事業主による具体的な評価項目
少なくとも下記の項目について運営管理機関から報告を受け、評価を行い、報告内容及び評価の内容を加入者等に対して開示することが望ましい。
  1. 上記「事業主の忠実義務の内容として盛り込まれた項目」(運用商品に関する4つの例示項目)
  2. 運営管理機関による運用商品のモニタリングの内容(商品や運用会社の評価基準を含む)、また報告があったか
  3. 加入者等への情報提供がわかりやすく行われているか(例えばコールセンターや加入者ウェブの運営状況)
また、運営管理機関の事業継続性も重要となることから、運営管理業務の運営体制、運営管理機関の信用及び財産の状況等も評価項目とすることが考えられること。

なお、点検すべき項目や手法については確定拠出年金を実施している各企業により異なると考えられることから、上記項目以外にも、投資教育等、運営管理業務に付随して提供を受けているサービスで点検すべき項目があれば、当該項目についても評価することが望ましい。

運営管理機関による運用商品の公表
企業型確定拠出年金の運営管理機関は、加入者に提供している各運用商品に関する情報(商品内容、過去の運用実績、手数料を含む)を、一覧できるように取りまとめて記載したうえで、インターネットにより公表するものとし、少なくとも毎年1回、情報に変更がある場合には変更後の情報を公表するものとする。


これらの改正のうち、運営管理機関による運用商品の公表については2019年7月から施行、それ以外についてはパブリックコメントの結果公示日に施行する案となっています。

今回の改正案は企業型確定拠出年金の運用ラインナップに関する問題を改善させる大きなターニングポイントになり得るものですが、一方で実効性の確保には不十分な点もあると考えます。これについては別途まとめたいと思います。
運営管理機関と商品評価の実効性を確保するために

<2018/6/24追記>
せっかくなのでパブリックコメントに意見を出してみました。内容はこちら