確定拠出年金(DC)の運用でよく言われることの1つに「分散投資」があります。「すべての卵を1つのカゴに盛るな」という有名な格言もありますね。簡単にいうと、いろいろな種類の資産に分散して投資することで1つがダメでも全滅しないようにして、資産全体のリスクを軽減するという考え方です。

この考え方はもちろん間違ってはいないのですが、DCでの運用を考える際に注意したい点を3つあげておきたいと思います。

「全体=DC」ではない

DCのプランを提供する金融機関(運営管理機関)の投資教育テキストなどでは、資産の種類を
  • 元本確保型
  • 国内(日本)債券
  • 国内(日本)株式
  • 外国債券
  • 外国株式
の5つに分け、各資産への投資割合を示したいくつかのパターンを運用モデルとして提示しているケースがよくあります。例えば、最も保守的なモデルAは「100%元本確保型」、最も積極的なモデルEは「国内債券と外国債券が各10%、国内株式と外国株式が各40%」、モデルB~Dは中間的なその中間的な割合で設定といった具合です。

しかし最初に説明したように、分散投資の目的は「資産全体のリスクを軽減する」ことにあります。個人がもっている資産はDCだけとは限りません。DC以外に投資の経験がない人でも、預金や保険・個人年金などで資金を積み立てている人はそれなりの割合でいるでしょう。

また会社員であれば、会社がDC以外の退職金制度を用意しているケースも多くあり、こうした制度では基本的に会社や年金基金等が一定の給付額を約束しています。つまり、「元本確保型」の部分についてはDC以外のところである程度カバーできていることが多いということです。

そうなると、DCで積み立てる資産についてはより積極的に投資に振り向けることで、資産全体で見た分散投資が実現できることになります。DCには運用益が非課税となるメリットがありますから、ほとんど利息の付かない定期預金などは通常の銀行口座においておき、より大きな運用益を見込める投資信託をDCで購入することは、税制面から見ても合理的です。

国内債券への配分は抑えておく

国内債券は本来安定的な運用が期待できる資産であり、長期投資においても安定性を重視するときにはメインの投資対象として考えてよい資産です。実際、確定給付企業年金(DB)では国内債券の割合が最も高く、27.6%を占めています(こちらに掲載の「確定給付企業年金の事業状況等(2015年度)」より)。

しかし日銀の金融政策により、長期国債の利回りはほぼ0%という異例な状況が続いており、通常の国内債券投資ではほとんど収益が期待できない状況になっています。そればかりか、将来金利が上昇したときには損失が発生する可能性があります。

したがって、金利が正常化するまでの間は、国内債券への配分は元本確保型や外国債券に振り向けておきたいところです。為替ヘッジ付きの外国債券や物価連動国債を投資対象とする商品があれば、これらに振り向けるのもよいと思いますが、こうした商品がラインナップにあるプランはあまり多くないかもしれません。

ちなみに、DBの運用に関しても企業としては保証利回りのついた一般勘定に資産を振り向けたい意向がありますが、一般勘定を提供している生命保険会社がほぼ新規・追加の受け入れを停止しているため、ヘッジ付き外債等を国内債券の代替資産として組み入れているケースもあります。

株式投資はグローバルに考える

投資教育のテキスト等に載っている運用モデルや、1本の商品で分散投資ができるバランス型の投資信託の資産配分については、上記のとおり株式を「国内」と「外国」で区分するのが一般的であり、国内株式への投資割合は、外国株式の割合と同じがそれ以上に設定されているケースが多くなっています。

しかし、企業の経済活動がグローバルする中で、株式を日本と海外で区別する意味合いは薄れています。実際、国内株式と外国株式の収益率はほぼ連動しています。
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GPIFの平成28年度運用概況書より、過去10年間の国内株式と外国株式のベンチマーク収益率を比較

となると、世界の中での日本の経済規模を考えれば、株式の半分以上を日本に投資するのは日本に偏りすぎであり、世界規模での経済成長の恩恵を十分に受けられない可能性があります。株式市場の規模(時価総額)やGDPの観点で考えれば、株式のうち日本への投資割合は1割未満でもおかしくありません。

DBでも、以前は外国株式より国内株式の割合のほうが高くなっていましたが、2011年頃を境に逆転し、その後も外国株式の割合が高まる傾向にあります。上記「確定給付企業年金の事業状況等(2015年度)」によると、外国株式と国内株式の比率はおよそ4:3となっています。

株式への投資については国内と外国という一般的な区分にとらわれず、グローバルな視点で偏りのない配分となるように、商品の組み合わせと割合を考えるのがよいでしょう。ちなみに私はDC以外で日本の株式に投資していることもあって、DCでの株式投資については99%が海外です。

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