先月(2018年4月)4日に、次回の公的年金の財政検証に向けた厚生労働省の第1回年金部会が開催されました。なかなか議事録が公開されませんでしたが、ようやくこちらにアップされていたので早速読んでみました。

公的年金については、2月に閣議決定された高齢社会対策大綱において受給の繰り下げを70歳以降も可能とすることが盛り込まれ、年金部会でその具体的な検討を行う予定となっていることから専らこの点が注目されていますが、議事録を見る限り「厚生年金の適用拡大」に関する発言が最も多いという印象です。

厚生年金の適用拡大に関しては、従業員数501人以上の企業においては2016年10月より週20時間以上等の要件を満たすの短時間労働者に拡大され(強制適用)、従業員数500人以下の企業においては2017年4月より労使合意による任意適用が可能となっています。

また、さらなる適用拡大について2019年9月までに検討を加えることが法律の附則に規定されており、この年金部会で今後具体的な議論が行われることとなります。
今回の部会では、各委員から以下のような意見が聞かれました。
  • 企業規模によって今分かれているところをどうするのかということが、今後議論が必要なのではないか
  • 強制適用事業所の線引きが今のままでいいのか(注:従業員5人未満の個人事務所等は強制適用の対象外)
  • 実態として雇用に近いけれども、委託契約で働いている方の社会保険についてどうするか
  • 原理原則を大事にし、被用者は全員、適用拡大するんだと、そして、こういうタイムスケジュールでやるのだという強い決意のもとに、どういう段階を踏んでいったら、より摩擦が少なくやっているのかという議論をやるべき
  • 本来、社会保険のあり方として、個人が加入の有無を選択できるような制度は望ましいものではない(注:適用対象が労働時間や報酬水準で線引きされていることにより、労働時間を調整することで対象外となるような働き方を選択するケースがあることに対して)
  • 短時間労働者の8.8万円の報酬の下限について、国民年金とのバランスを本当に考える必要があるのか(注:基礎年金のみの国民年金の保険料が月に約1.6万円であり、標準報酬×18.3%で計算される厚生年金保険料がこれを下回らないように、適用対象に報酬の下限が設定されている)
厚生年金の適用拡大は、特にパート社員(定年後再雇用の短時間勤務社員を含む)を多く抱える企業の雇用スタンスや、当人の働き方に大きな影響を与えるものであり、上記のような意見が最終的にどこまで反映されるのか、今後の議論に注目したいと思います。