先月の話になりますが、日経に「株式配当 こんな節税法も 所得税・住民税、選択を一工夫」という記事が載っていました。

(NISAではない)課税口座で上場株式を保有している場合、その株式の配当に対しては20%(所得税15%+住民税5%)が源泉徴収されるため確定申告は不要ですが、あえて申告することで納める税金を小さくできる場合がある、という内容です。

配当所得については、確定申告を行うことで給与等の他の所得と合算して税額を計算する「総合課税」という方式を選択することができます。

その場合、まず所得税については「配当控除」の適用により、課税総所得金額が1000万円以下なら配当の10%分を税額から差し引くことができます。したがって、課税所得が900万円以下であれば配当にかかる実質的な税率は以下のとおりとなり、源泉徴収の税率である15%を下回ります。
(課税所得):(配当にかかる税率)
~330万円:0%
330~695万円:10%
695~900万円:13%
※900万円を超えると税率は23%以上となり、税負担は増える。

しかし住民税については配当控除による税額控除は2.8%となっており(課税総所得金額が1000万円以下の場合)、実質的な税率は7.2%(=10%-2.8%)と源泉徴収の税率である5%を上回ってしまいます。

ところが、所得税については総合課税を選択して申告した場合でも、別途市区町村に手続きを行うことで住民税については「申告不要制度」を選択する、つまり源泉徴収の5%のみで済ますことができるようになっています(であれば、手続きしなくても住民税については源泉徴収のみで終わらせるようにしてほしいところですが…)。

そうすると、所得税と住民税を合算した税率は以下のとおりとなり、源泉徴収の税率(所得税+住民税)である20%を下回り、税負担を減らすことができます。
(課税所得):(配当にかかる税率)
~330万円:5%
330~695万円:15%
695~900万円:18%

住民税において申告不要制度を選択すると配当収入は課税所得にカウントされないため、国民健康保険や後期高齢者医療制度の保険料の負担増も回避できることが、日経の記事には紹介されています(組合健保や協会けんぽに加入する現役世代の会社員には直接関係ないですが)。

また、夫婦2人以上の世帯の場合、株式投資は夫婦のうち所得の低いほうの口座を使うことで、上記の節税手法を活かせる可能性が高まります。

但し、専業主婦(夫)やパート勤務等で配偶者(特別)控除の対象となっている場合は、総合課税を選択すると配当収入が課税所得に合算されてしまって配偶者(特別)控除を受けられなくなったり、控除額が減らされる可能性もあるので、判断が難しいところですね。

<関連記事>
年収⇒課税所得の換算表
源泉徴収票から読み取るiDeCoの節税効果