昨日の記事では、今月(2018年4月)11日開催の財務省財政制度分科会に提出された社会保障に関する資料から、財務省視点での今後の公的年金制度についての考え方を探ってみましたが、「各論」のパートで多くのページが割かれているのは年金ではなく、医療・介護のほうです。

具体的な数字でいうと、タイトルや目次を除くページ数は、年金がわずか4ページなのに対して、医療・介護は52ページもあります。それだけ医療・介護に対する財政負担のほうを重視しているといえます。

ではなぜ年金ではなく医療・介護なのか。その理由の次の2つに集約されると思います。

医療・介護費の増加は年金よりも大きい

1人当たりの医療・介護費は75歳以上の後期高齢者になると急増します。2025年には団塊の世代が全て後期高齢者となり、今後75歳以上の人口は大きく増えることが確実です。これにより、今後の社会保障給付費は、年金よりも医療・介護費の急増によって膨らんでいくことが予想されます。

<資料からの抜粋>
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さらに、現役世代が加入する健康保険(組合健保・協会けんぽ)については、給付費のほとんどを保険料で賄っていますが、高齢者が加入する国民健康保険や後期高齢者医療制度、介護保険にかかる給付については、その半分を公費(国と地方の税金)で賄っています。

ということは、給付費の総額が増えると同時に、その中で税金で賄わなければならない割合も増えていくということです。

政策により財政負担をコントロールできる余地がある

年金制度は本人が現役時代に納めてきた保険料の実績に応じて、65歳になったら直接現金で給付するというのが基本的な仕組みです。抜本的な制度の見直しを行わない限り、給付費をコントロールする余地は限られます。そして、すでに年金を受給している人の年金額を大きく減らすような「抜本的な見直し」は現実的ではありません。

一方で、医療・介護については、医療・介護サービスを利用したときに、その費用(の一部)を利用者に代わって負担するという形で給付が行われます。したがって、以下のような政策をとることで給付費をコントロールできる余地があります。
  1. 全体の費用(=医療・介護事業者に対する報酬)を抑える
  2. 医療・介護保険で負担する医療・介護サービスの範囲を限定する
  3. 医療・介護保険で負担する費用の割合を減らす(自己負担の割合を増やす)
実際、資料の中でも「医療・介護制度改革の視点」として以下のような記述があります。
  1. 診療報酬・薬価の適正化、医療提供体制のコントロールの仕組みの整備・充実
  2. 経済性・費⽤対効果を踏まえた新たな医薬品・医療技術への公的保険の対応、⼩さなリスクは⾃助で対応
  3. 後期⾼齢者の窓⼝負担の引上げ
平たく言えば、1は病院や製薬会社に支払う対価を抑えたり入院可能なベッド数を減らしたりすること、2は高額な新薬や軽い症状への対応は保険の適用外とすること、3は75歳以上の人にも3割の自己負担を求めることです。

もちろん、医療費の無駄を省いたり高齢者にも相応の負担を求めることは必要だと思いますが、特に1に関しては、必要な医療・介護サービスが提供できる体制をいかに維持するかということも、あわせて考える必要があります。財政負担の軽減を優先した結果、医者にかかれなくなったり介護を受けられなくなったりしては本末転倒です。

これについては、医療・介護事業者が、保険からの給付以外に、利用者からの対価により収益を得られるような道を広げていくこと、そして必要な財源についてはやはり税金として確保していくことが必要ではないかと考えます。

高齢者の使われない預金になってしまう可能性のある年金給付と違い、医療・介護の給付は事業者やそこで働く人に支払われ、世の中に循環していきます。つまり、医療・介護サービスに回る税金の支払いは、経済効果のある投資と捉えることもできるのではないかと思います。