今月から厚生労働省の年金部会にて、5年に1回の財政検証に向けた議論がスタートしましたが、これとは別に、財務省の財政制度分科会というところでも公的年金を含めた社会保障制度についての議論が行われています。

財政を預かる財務省での議論なので当然といえば当然ですが、焦点はいかに社会保障費の膨張を抑えていくかというところに当たっています。年金に関しては支給開始年齢を65歳から68歳に引き上げる案が提示されたことがニュースでも報じられています。
ただこちらに掲載されている当日の資料を見る限り、実質的な給付(支給開始から終了=死亡までの受取総額)の引き下げを意図したものではないようです。

現在でも、年金の支給開始は65歳を原則としつつも60~70歳の間で選択することができます(今後この幅を70歳超まで広げることが検討される予定)。65歳より開始を遅らせれば年金額は増え、早めれば減るので、トータルではあまり変わらないように設計されています。

今回の財務省の案は支給開始年齢を引き上げると同時に年金額も引き上げる内容となっており、現在の基本的な設計は維持しつつ、原則的な開始年齢を65歳から引き上げるものと読み取ることができます。

<資料からの抜粋>
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つまり、財務省案のとおり原則的な支給開始年齢を引き上げたとしても、それが直接国庫負担の抑制につながるわけではありません。

では財務省のねらいは何かというと、年金の開始年齢とセットで企業における雇用継続の年齢等についても引き上げ、高年齢者の就労を進めることで、税収や保険料収入を確保することにあるのではないかと思います。

また、公的年金の財政検証においては、将来的な年金の給付水準として「所得代替率50%」の確保を目標に置いています。所得代替率とは、標準的に見た場合に、年金を受け取り始めるときの年金額が、その時の現役世代の手取り収入に対して何%になっているかという割合を示しています。

受取開始時の標準的な年金額を65歳開始ではなく68歳開始で見れば、年金額は25%ほど増加しますから(現在の繰下げ乗率で計算した場合)、所得代替率50%の確保は容易になり、年金給付へ追加の財源を投入する必要はなくなります。

一方で、給付水準を確保するためのもう1つの方法である加入期間(保険料の支払期間)の延長に対しては、警戒感も見えます。

現在、厚生年金については会社員である限り最長70歳になるまで加入することになっていますが、国民年金(基礎年金)については60歳までとなっています(未納期間等がある場合は65歳または70歳まで任意加入可)。60~65歳の間は保険料の支払も年金の受取もない、いわば空白期間となっているわけですが、これを保険料の支払期間とすればその分年金額を増やすことができます。

しかし、基礎年金の支給についてはその半分を国庫負担、つまり税金を財源とすることとなっていることから、加入期間の延長による基礎年金の増額は国庫負担の増加に直結します。これは財務省の立場としては見過ごすことができません。財務省の参考資料によると、加入期間延長により追加で必要となる財源は、30~40年後には現在の価格で1兆円強になると見込まれています。

年金の給付水準(所得代替率)を将来的に維持していくためには、加入期間の延長も検討すべき事項になりますが、その実現にあたっては国庫負担の増加への対応は避けて通れない問題となりそうです。