先週の日経に掲載されたこの記事、1面トップにあったので読んだ人も多いのではないかと思います。

最近は何かと「人生100年時代」というフレーズを目にするようになりましたが、企業年金の見直しに関していえば、厚生年金の支給開始年齢引上げと、それに連動した60歳以降の雇用継続義務化が直接の引き金になっています。

ただ対応の方向性は企業によってまちまちです。記事で紹介されたいくつかの企業年金制度の変更内容から、その背景にあるものを考えてみます。

定年延長と同時に終身年金の支給開始を引き上げ

1つ目は、定年を60歳から65歳に引き上げるのと同時に、終身で支給する企業年金の開始も60歳から65歳に引き上げるパターンです。現存する確定給付企業年金のほとんどは支給期間が最長20年の有期年金ですが、一部の企業年金では生きている限り支給される終身年金を設けています。社員からすれば非常に手厚い年金ですが、会社からすると重い負担となります。

こうした企業において、定年延長による60歳以上のシニア社員の処遇改善は人件費の負担増につながりますが(但し定年延長したからといってシニア社員の処遇を60歳前と同一にしなければならないわけではない)、同時に企業年金の支給開始を遅らせることで、退職給付債務や費用の負担は軽減されることとなります。

定年年齢と年金開始年齢の引き上げとセットで、企業年金への加入期間も60歳から65歳まで伸び、これによって1年あたりの年金額はやや増えることになりますが、それよりも支給開始時点の平均余命が短くなることの効果のほうが大きく出ます。

公的年金の場合、原則65歳開始の老齢年金について60歳からの受け取り選択すると年金額は30%減となり、逆に60歳開始の年金額を基準にすると5年遅らせることで43%(=0.3/0.7)増える計算になりますが、新卒で入社した社員の企業年金の加入期間が5年延びたところで年金額が43%も増えることはありません。

終身の企業年金を持ち、かつシニア社員の活用の余地がある企業において、定年と年金開始の同時引上げは、会社側、社員側の双方にとってメリットのある対応策となります。

60歳から受け取れる有期年金や確定拠出年金の新設

厚生年金の支給開始年齢引上げを補う形で雇用の継続が義務化されたわけですが、多くの企業では60歳で定年再雇用となり、賃金は大幅減となります。

これをカバーする定期収入として、既存の企業年金や退職金の一部を移行する形で、60~65歳の間の有期年金や、受け取り方法を柔軟に選択できる確定拠出年金を導入することで、会社としては退職給付を含む人件費の増加を抑えつつ、社員の手取り収入を一定程度確保することができます。

また、雇用継続の義務化は段階的に引き上げられていることろであり、現在(2018年度)は62歳まで、これが65歳までになるのは2025年度からとなります。シニア社員の雇用にあまり積極的でない企業では、しばらくは65歳を待たずに再雇用を終了するケースも多くなると考えられます。

引退の時期や厚生年金の支給開始時期の変わり目である現在において、確定拠出年金の受取時期や受取方法を柔軟に選択できるという特徴は、受け取り側にとってのメリットであるといえます。

60歳から受け取れる有期年金の廃止

現在の法律では、60歳以降の継続雇用は義務付けられているものの、定年は60歳のままでもよいことになっています。しかし将来的には、60歳という年齢だけを理由に処遇を大幅に下げることはできなくなっていくのではないかと思います。

そうなると、上記のような65歳までの有期年金はあくまで経過的な制度となり、例えば定年が65歳に引き上げられて処遇も改善されれば、こうした制度の必要性はなくなります。

60歳代前半の年金を手厚くするという設計は継続雇用の義務化後に初めてできてたものではなく、2001年に厚生年金定額部分の支給開始引上げが始まった時にも同様の設計を設ける例がありました。

そうした企業が人材不足等を理由にシニア社員の積極活用に踏み切れば、有期年金部分の原資は必然的に60歳以降も働く社員の処遇の改善に回されることになるでしょう。