昨日は、2018年度税制改正をテーマとしたFPの勉強会に参加してきました。給与や年金についての改正に関しては税制改正大綱で一通り把握はしていましたが(関連記事「2018年度税制改正大綱~2020年以降増税になる人は?」)、それ以外にも、以下のような行き過ぎた節税に網をかける改正についての解説があり、興味深い内容でした。
これに対して、同じ法人でも一般社団法人は非営利法人であり、設立者に対する利益の分配はありません。株式の相続も起こらないため、設立者であり理事長(経営トップ)でもある親が死亡し、子が後を継いで理事長となった場合でも、相続税の負担はありません。
このほかにも一般社団法人には「登記だけで設立できる」「行政庁の監督がない」「役員の人数、親族割合に対する規制がない」「解散時には関係者で残余財産を分配可能」といった特徴があり、こうした仕組みを利用して、一般社団法人を設立して個人の資産を移転することで、相続税を回避する事例が相次いでいます。
このような本来の趣旨に反する一般社団法人を利用した節税を防ぐため、2018年4月以降、同族理事が理事の過半を占める一般社団(財団)法人の理事が死亡した場合、当該法人が「当該法人の純資産÷(死亡時における同族理事+1)」により計算された金額を相続により取得したものとみなして相続税が課されることとなります(経過措置あり)。
法人に対して相続税を課すというのは国税庁も考えたものですね。
ところが、これも以下のような手法により意図的に「家なき子」状態を作り出すことで、相続税の節税に利用されるようになりました。
<2018/4/15追記>
NIKKEI STYLEにも詳しい記事が掲載されました。
この仕組みを利用し、現金を一時的に不動産(例:アスファルト敷きの駐車場)に換えた状態で相続し、その後売却することで節税する方法が広まりましたが、これもやはり本来の趣旨(事業の継続に配慮)に沿わないものだということで、2018年4月以降の相続について、相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地は減額の対象外となりました。
逆に言うと、3年以上貸付事業に利用された宅地であれば、本来の事業目的のものだと認めましょうということですね。
…というわけで、今回の税制改正による「行き過ぎた節税の是正」はいずれも相続税絡みのものとなっています。それだけ相続税については節税のニーズが強く、いろんな手法が研究されているということなのでしょうが、今回の改正内容を見て、18年前の新人研修時に税理士の講師が言っていた「行き過ぎた節税は税制を変えてしまう」という言葉を思い出しました。
一般社団法人を利用した節税
法人(会社組織)にはいくつか形態がありますが、株式会社については株主に利益を配分することを目的としており、相続により株式を取得した場合には相続税の課税対象となります。特にオーナー会社の社長がその子どもに自社の株式を相続させるような場合には、多額の税負担が発生しかねません(これに関しても2018年度税制改正で中小企業向けの減免措置が拡充されていますが、今回は割愛します)。これに対して、同じ法人でも一般社団法人は非営利法人であり、設立者に対する利益の分配はありません。株式の相続も起こらないため、設立者であり理事長(経営トップ)でもある親が死亡し、子が後を継いで理事長となった場合でも、相続税の負担はありません。
このほかにも一般社団法人には「登記だけで設立できる」「行政庁の監督がない」「役員の人数、親族割合に対する規制がない」「解散時には関係者で残余財産を分配可能」といった特徴があり、こうした仕組みを利用して、一般社団法人を設立して個人の資産を移転することで、相続税を回避する事例が相次いでいます。
このような本来の趣旨に反する一般社団法人を利用した節税を防ぐため、2018年4月以降、同族理事が理事の過半を占める一般社団(財団)法人の理事が死亡した場合、当該法人が「当該法人の純資産÷(死亡時における同族理事+1)」により計算された金額を相続により取得したものとみなして相続税が課されることとなります(経過措置あり)。
法人に対して相続税を課すというのは国税庁も考えたものですね。
「家なき子特例」を利用した節税
被相続人(亡くなった人)が所有していた住居を被相続人の配偶者や同居していた親族が相続する場合、住居の確保の観点から、本来の評価額から80%引きで相続税を計算できることとなっていますが、以下の要件を満たす場合には別居の親族についても80%OFFが適用されることとなっています。- 被相続人に配偶者も同居親族もいない(親は1人暮らしだった)
- 3年以上自分または配偶者の持ち家に住んでいない(自分は賃貸暮らしだった)
- 相続してから申告期限まで保有している(相続した家をすぐに売却しない)
ところが、これも以下のような手法により意図的に「家なき子」状態を作り出すことで、相続税の節税に利用されるようになりました。
- 持ち家のない孫に自宅を相続させる
- 相続人である子の持ち家を親が買い取ることで借家にする
- 3年以内に3親等内の親族(及び関係する同族会社)の持ち家に住んだことがない
- 被相続人の住居を過去に所有していたことがない
<2018/4/15追記>
NIKKEI STYLEにも詳しい記事が掲載されました。
NIKKEI STYLE マネー研究所@nikkeistyle_m<追記終>「家なき子」の相続節税厳しく 負担、数千万円増も 4月の税制改正で #マネー研究所 #NIKKEISTYLE #新着 #不動産所得 #事業的規模 #家なき子 #小規模宅地等の特例 #相続 #税制改正 #税務署 #税務調査 #節税対策 https://t.co/rS6JDaTAga
2018/04/14 05:46:01
貸付事業用宅地を利用した節税
同じく宅地に対する相続税の節税策として、貸付事業用宅地に対する評価額の減額を利用した方法があります。賃貸アパートや貸駐車場を相続したとき、貸付事業を継続して申告期限(相続開始から10ヶ月)まで保有した場合には、200㎡までの部分に対して評価額を50%OFFできるという仕組みです。この仕組みを利用し、現金を一時的に不動産(例:アスファルト敷きの駐車場)に換えた状態で相続し、その後売却することで節税する方法が広まりましたが、これもやはり本来の趣旨(事業の継続に配慮)に沿わないものだということで、2018年4月以降の相続について、相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地は減額の対象外となりました。
逆に言うと、3年以上貸付事業に利用された宅地であれば、本来の事業目的のものだと認めましょうということですね。
…というわけで、今回の税制改正による「行き過ぎた節税の是正」はいずれも相続税絡みのものとなっています。それだけ相続税については節税のニーズが強く、いろんな手法が研究されているということなのでしょうが、今回の改正内容を見て、18年前の新人研修時に税理士の講師が言っていた「行き過ぎた節税は税制を変えてしまう」という言葉を思い出しました。