以前、「公的年金の財政検証に向けた前提の議論が始まる」に書いたとおり、公的年金の財政検証(積立金や給付水準についての将来推計)は5年おきに行われており、前回は2014年、次回は2019年に実施となります。

前回の財政検証では、ケースA~Hの8通りの経済前提に応じた将来推計の結果が示されたわけですが、それに対して実際はどう推移してきたのか、2016年度末(2017年3月)の結果が先日開催された厚生労働省の社会保障審議会年金数理部会で報告されました(こちら)。

ケースCとの比較では、積立金の実績(厚生年金と国民年金の合計)は将来見通しに対して+22兆円(+13%)と大きく上回っています。これは主に資産運用の実績が見通しを上回ったことによるものです。

ちなみに、前回の財政検証のケースCでは、マクロ経済スライドによる給付水準調整(年金額の抑制)は2043年度に終了し、その時点での厚生年金の所得代替率(現役世代の手取り収入に対する65歳受給開始の年金額の水準)は51.0%と推計されています。2014年時点での所得代替率は62.7%ですから、2割程度水準が低下する計算です。

したがって、次回の財政検証では所得代替率の見通しが改善されると期待したいところですが、以下のとおり賃金水準の実績は財政検証の前提を大きく下回っています。
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賃金が増えていかないということは、年金財政を支える保険料収入が増えていかないということであり、長期的には年金財政にマイナスの影響を与えます。

今回の報告にもあるとおり、将来の年金給付の9割はその年の保険料収入と国庫負担(税金)で賄われ、積立金を財源とするのは1割に過ぎないことから、賃金上昇率の前提をどう置くかによって、財政検証の結果は大きく変わってくることになるでしょう。