昨日Twitterでたまたま見つけたのですが、障害者の保護者を対象とした公的な生命保険というのがあるんですね。

独立行政法人 福祉医療機構が運営している心身障害者扶養共済制度であり、詳細はこちらの「制度のごあんない」にあるとおりですが、簡単にまとめると以下のとおりです。
  • 加入できるのは障害者(知的障害を含む)を扶養している65歳未満の保護者(主として障害のある子を持つ親を想定しているものと思います)
  • 障害者1人に対して加入できる保護者は1人
  • 月々の掛金(保険料)は加入時の保護者の年齢(5歳刻み)に応じて設定
  • 掛金の払込期間は20年または65歳になるまでの期間のいずれか長いほう
  • 保護者が死亡または高度障害となった場合、その後障害者に対して月額2万円(2口加入の場合は4万円)の終身年金が支給される。
障害のある子を持つ親が、自分がいなくなった後のことを考えて入る保険、ということですね。

例えば保護者が45歳の場合、月々の掛金は1口17,300円で払込期間は最大20年であるのに対して、保護者が亡くなった(高度障害になった)後の障害者への年金は月2万円で生涯にわたって受け取ることができるため、保護者と障害者の年齢差や障害の内容・程度にもよりますが、保険商品として考えたときには割安な掛金設定になっていると考えてよいでしょう。

自治体による掛金の減免制度や税制上の優遇措置(掛金は所得控除、受取は非課税)もあり、保険をベースとしつつも福祉的な意味合いを併せ持つ制度だと言えます。

なお、もしも障害者のほうが先に亡くなってしまった場合には、弔慰金として最大25万円が保護者に支給され、そこで制度から脱退することとなります。任意に制度を脱退する場合にも、同じ金額が脱退一時金として支給されることとなっています。

さて、掛金が割安になっているということは、運営側からすると財政的な余裕があまりないことを意味します。積立金が不足すれば、約束通り年金を支払えなくなる可能性もあるわけですが、そのあたりはどうなっているのでしょうか。

こちらに公表されている保険勘定の財務諸表を見たところ、2017年3月末時点で保有している積立金(金銭の信託)は741億円、それに対して将来の年金支払に備えて積み立てておくべき責任準備金は771億円、差し引き30億円が繰越欠損金であり、企業でいうところの”債務超過”状態にあります。

民間の生命保険会社と違い債務超過だからといって事業が停止されることはなく、こちらのページの最後のほうに掲載されている今後30年の予測でも積立金が枯渇する心配はなさそうですが、制度の持続可能性という点で考えると今後見直しが必要になるかもしれません。なお、過去には2008年4月に掛金の引き上げが行われています(詳しくはこちら)。