ここ数年でiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)や企業型確定拠出年金でのマッチング拠出、つみたてNISAなど、税制優遇のある積立投資の仕組みが充実してきました。老後資金をはじめとした長期の資産形成にはこれらの制度をぜひ活用したいところですが、住宅ローンなどの借金がある場合は投資よりも繰り上げ返済を優先するのが基本です。

銀行は預金でお金を集め、そのお金を貸して儲けを出します。儲けを出すために、当たり前ですが、資金を借りている人から徴収する金利は、預金者に払う金利よりも十分に高く設定されます。余裕資金を繰り上げ返済に回してローン残高を減らすのは、ノーリスクでこの高い金利で運用するのと実質的に同じであり、他よりも有利な”運用方法”になります。

しかし最近は住宅ローン減税と超低金利により、この原則が必ずしも当てはまらない状況になっています。住宅ローンの変動金利は低いところでは0.5%程度になっている一方、住宅ローン控除の適用を受けることによってローン残高の最大1%が税金から控除されるため、実質的にはマイナス金利、つまりローン残高を多く残しておいたほうが有利になります。

したがって、余裕資金はひとまず繰り上げ返済には回さず、将来金利が上がったときにまとめて繰り上げ返済できるよう、別に積み立てておくことでもよいでしょう。

では、この別に積み立てておく返済資金は確定拠出年金やつみたてNISAなどで運用すべきでしょうか?

まず、確定拠出年金については60歳まで引き出すことができないため、金利が上がったからといってローンの返済に回すことはできません。確定拠出年金は老後専用資金であり、住宅ローンの返済資金としては不適当です(余裕があれば、返済資金とは別に確定拠出年金で老後資金を積み立てておくのはありだと思います)。

ではつみたてNISAのようにいつでも引き出せる運用ならいいかというと、これもあまりお勧めはできません。変動金利の場合、金利がいつ上昇するかは予測できないため、どれくらいの期間、どの程度のリスクを取って運用すべきか、判断できないためです。

住宅ローン控除の適用を受けている期間、繰り上げ返済の代わりに積み立てているお金は、置いておくだけで最大1%の利息を生み出しているようなものです。普通預金や期間の短い定期預金に預けておくだけでも十分でしょう。投資に本格的にシフトするのは、返済資金が貯まり、完済のめどがついてからでも遅くはないと考えます。