今週(2018年2月5日~9日)はアメリカを発端として世界中で株価が値下がりしました。日経平均株価は先週末の2月2日と比べて8.1%の下落、アメリカの代表的な株価指数であるNYダウは2月8日時点(終値)で6.5%の下落となっています。

最近、iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)や会社の確定拠出年金で株式への投資を始めたという方は、急な株価の下落で不安に思っているかもしれませんが、それほど心配する必要はありません。基本的にはほったらかしで大丈夫です。なぜそう言えるのか、その理由を順に説明していきます。

確定拠出年金は「のんびりした投資」
確定拠出年金では、基本的に投資信託の購入を通じて株式への投資を行うこととなります。1社1社の企業の株価は時々刻々と変化しますが、投資信託の価格である「基準価額」が更新されるのは1日に1回だけです。売り注文(スイッチング)の手続きを行ったとしても、その時点では売却する値段は確定しておらず、翌営業日以降になって確定することもあります。

つまり、確定拠出年金での投資は短期的な相場の動きを見ながらタイミングを計って取引できる性質のものではなく、いわば「のんびりした投資」なのです。

積立投資では価格の下落はチャンス
そうはいっても、このまま放っておいたらどんどん値下がりしていくのではという不安があるかもしれません。確かに、ここ数年上昇を続けていた株価が下落に転じ、しばらく下がり続けるという可能性もないとは言えません。

ただいつまでも下がり続けるということは考えにくく、5~10年以上の長期で見れば一時的に下がることはあってもまた戻ってくる可能性が高いと言えるでしょう。

こうした点を考えると、確定拠出年金のような積立投資では、価格の下落はその後の利益につながるものだとも言えます。例えば、下の図のように、積立開始直後から価格が下落し、その後回復して開始時と同じ価格で積立期間が終了するケースを考えると、下落していた期間に購入していた分が値上がりして最終的には利益を得られることになります。
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もちろん、最終的に価格が戻ることが利益を得られる条件であり、どんなケースでも積立投資なら損はしないということではありません。しかし、原則として60歳まで資金を引き出せず、必然的に長期投資となる確定拠出年金では、価格の一時的な下落はむしろチャンスととらえることができます。

運用の見直しは相場ではなく将来の資金計画で考える
では、運用を見直すべきタイミングとはいつでしょうか?上にも書いたとおり、残りの運用期間が十分に残っていれば、一時的に価格が下落しても取り返す可能性は十分に残っています。しかし、受け取りの時期を目前にしたところで価格が下落してしまうと、損失が確定してしまいます。

したがって、株式中心の運用を行っている場合には、運用期間が残り10年程度になったところで見直しを考えるとよいでしょう。例えば、毎年10分の1ずつ株式の運用を債券や定期預金などの安全性の高い運用に移していくことで、短期的な相場変動による影響を抑えつつ、受け取り直前の損失のリスクを回避することができます。

確定拠出年金の受け取りは原則として60歳で可能となりますが、必ずしも60歳で受け取る必要はなく、70歳までは資金を引き出さずに運用を継続することができます。また、受け取り方法として年金を選択した場合には、資金を取り崩しながら(現金化しながら)運用を継続することができますから、残りの運用期間は60歳までと決まっているわけではありません。

また、ある一定の時点で老後資金として十分な金額が積み上がったと判断できれば、60歳前の時点であっても、全て定期預金にしてしまうという考え方もあるでしょう。そのためには、老後の収支の見込みを立てておく必要があります。

いずれにしても、確定拠出年金の運用の見直しは、予測できない相場の動きではなく、老後資金としていくら必要で、いつからどのように受け取るのかという将来の資金計画をもとに考えるものだと心得ておきましょう。