昨日は、年に1回ある年金数理人会の実務研修会に参加してきたのですが、その中の一コマ「企業年金の裁判例に関する動向」では、正社員との労働条件の差異について、有期契約社員が会社に対して損害賠償等を請求した裁判例の解説がありました。

検索してみたところ、全文はこちらに掲載されています(余談ですが、こういうのが掲載されるとその会社の賃金、退職金、福利厚生制度の内容や水準がだいたい分かってしまいますね)。

訴えを起こした契約社員側の主張は、正社員との労働条件の差異が、以下の労働契約法20条に違反するというものでした。
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

訴えにあった労働条件とは、具体的には以下の内容です。
  • 賃金(本給及び資格手当)
  • 住宅手当
  • 賞与
  • 退職金
  • 永年勤続褒章
  • 早出残業手当
このうち、賃金と賞与については正社員よりも水準が低く、住宅手当・退職金・永年勤続褒章については無し(正社員は有り)、早出残業手当については割増率が正社員よりも低く設定されており、これらの差異に対する損害賠償を求めて訴えを起こした、というものです。

結果からいうと、判決では、早出残業手当の割増率の差異については不合理であると認め、これによる損害を3,609円と算定しましたが、その他の労働条件の差異については不合理とまでは認められないとし、契約社員側の主張は退けられました。

理由として、正社員とは職務の内容等に大きな相違があることや、(退職金の有無については)長期雇用を前提とする正社員を対象とする一方で、短期雇用を原則とする有期雇用社員を対象外とすることは、人事政策上一定の合理性を有することがあげられています。

ただ、今後無期転換ルールにより雇用期間の定めがなくなると、「短期雇用だから契約社員は退職金の対象外でよい」ロジックは通用しなくなるため、引き続き契約社員を退職金の対象外とするのであれば、職務内容等の違いから処遇に差を設けることが不合理でないことを説明できるようにしておく必要がありそうです。

また、企業型の確定拠出年金(DC)の規約の承認基準においては、DCの加入対象としないパート社員等について、DCの加入対象となる社員と比べて労働条件が著しく異なっている場合には、他の退職給付制度による代替措置を設けなくても、例外的に「必ずしも不当に差別的な取扱いを行うこととはならない」とされていますが、特に無期転換した契約社員に対して、この例外を当てはめることは難しくなるかもしれません。