昨日は大阪にて退職給付会計セミナーを開催しました。
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例年、3月末決算を控えた1~2月に開催している定番のセミナーで、退職給付会計の基礎の解説や、実務を想定した演習を行っています。

今回の演習では、定番となっている退職給付会計ワークシートの作成に加え、退職給付債務の計算に用いる割引率の決め方を取り上げました。

退職給付会計基準では、割引率の決定について、
退職給付債務の計算における割引率は、安全性の高い債券の利回りを基礎として決定する。
と、非常にシンプルな一文で規定されているだけですが、実際には以下のように、いくつかの具体的な方法・手順があり、各企業において採用している方針に沿って決めていく必要があります。

これから決算を迎えるにあたり、退職給付会計業務を担当している方は、自社がどの方法を採用しており、どういう手順で割引率を決定するのか、事前に確認しておくとよいでしょう。

年数に応じた率とするか、一本の率とするか

債券の利回りは、一昨日の記事にも書いたとおり、満期までの年数によって異なります(一般的には年数が長いほど利回りは高くなります)。

したがって、「1年後の給付見込額に対する割引率は残存1年の債券の利回りとし、2年後の給付見込額に対する割引率は残存2年の債券の利回りとし、…(以下略)」というように、年数に応じて異なる割引率を設定するのが原則的な考え方となります。

しかしこの方法は計算が複雑になり、実務上も取り扱いにくいため、年数にかかわらず一本の率を設定する方法も認められています。実際には一本の率を採用している企業が大半です。

ではその「一本の率」をどのように決めるのか?その決め方にもいくつかの方法がありますから、前回の計算で採用した方法を確認しておきましょう。

国債の利回りを使うのか、社債の利回りを使うのか

退職給付会計基準では、その脚注において「割引率の基礎とする安全性の高い債券の利回りとは、期末における国債、政府機関債及び優良社債の利回りをいう。」と規定しています。

実際に用いられているのは「国債」と「優良社債」のいずれかであり、基本的には継続して同じほうを使用することとなりますから、自社で採用している方法がどちらなのかを確認しておきましょう。

ちなみに、国際会計基準においては、原則として優良社債を用いることとされています。

10%重要性基準を考慮するか

上記のとおり、割引率は、債券の「期末における利回り」をもとに決定することとなりますが、一方で会計基準の脚注には「割引率等の計算基礎に重要な変動が生じていない場合には、これを見直さないことができる。」とあります。

また、会計基準の適用指針では、割引率の変動の重要性について、退職給付債務への影響が10%以上かどうかで判断することが規定されています(10%重要性基準)。

例えば、前期末に最終的に用いた割引率が1.0%だったとして、当期末の債券利回りに基づく割引率が0.5%となった場合、割引率を0.5%引き下げることによる退職給付債務の増加が10%以内なら、当期末において最終的に採用する割引率は1.0%のままでよいということです。

但し、10%重要性基準を考慮せずに、当期末の債券利回りである0.5%を最終的な割引率とする方法もあり(というか、むしろこちらが原則的な考え方)、10%重要性基準を考慮するかどうかについては、毎期継続した方針を取るのが基本ですから、自社の方針がどうなっているのかを確認しておきましょう。

ちなみに、国際会計基準には10%重要性基準というものはなく、毎期末の債券利回りをそのまま最終的な割引率とする必要があります。